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<スズケンDIアワー> 平成14年2月14日放送内容より スズケン

慢性骨髄性白血病治療薬
メシル酸イマチニブ


愛知県がんセンター病院 病院長
大野 竜三

白血病治療とレチノイン酸の関係

 皆さんこんにちは。
 今日は、最近話題になっている新しい白血病の治療薬の話をします。
 白血病は造血幹細胞のがんですが、他のがんと同様に、多段階の遺伝子異常を経て発生することが判っています。
 白血病は全身病ですから、薬でしか治せません。しかし、治療法の進歩により、薬で治すことのできる最初のがんになりました。
 そして、白血病治療の歴史は、治療が強ければ強いほど、治癒率が高くなることを教えてきました。
 最も良い例は、小児の急性リンパ性白血病です。この白血病は、抗がん薬による強力な治療により、7割以上を治すことができるようになりました。しかし、大人の白血病の治癒率は低く、急性骨髄性白血病も、大人には比較的少ない急性リンパ性白血病も、共に3割程度しか治すことができません。
 子供とちがって、大人は強い治療に伴う副作用に耐えることができず、白血病は治っても副作用のために死亡するようなことが起きるためです。そのため、最強の治療法である骨髄移植も、子供では高い治癒率をもたらしますが、大人では、それほどの効果をあげていません。
 私たちは、今から15年ほど前からJapan Adult Leukemia Study Group というグループを作り、全国の約200の専門病院が協力して、よりベターな白血病治療を作り上げようと努力しています。しかし、大人の急性白血病の治療成績は、ここ10年以上、大きな進歩は見られていません。
 唯一の例外は、急性骨髄性白血病の約20%を占めている急性前骨髄球性白血病です。レチノイン酸による分化誘導療法が非常によく効くのです。レチノイン酸は、活性型のビタミンAですが、この薬に抗がん薬を併用することにより、この白血病の7割以上を治すことができるようになりました。
 ビタミンAですから、副作用はほとんどなく、合併症も少ないため、日本全体の医療費を年間で10億円近くも節約しています。
 その後の研究により、この白血病の原因に、レチノイン酸受容体遺伝子の異常が関与していることが判りました。そして、体内にある濃度のビタミンAでは、細胞が成熟できず死ななくなっている白血病細胞を、大量のビタミンAを投与することにより、無理やり成熟させ、自然死を誘導していることが判りました。すなわち、レチノイン酸は、白血病の原因となっている遺伝子異常に働く、特異的な分子標的薬であることが判ったのです。


提供 : 株式会社スズケン


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