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<スズケンDIアワー> 平成14年2月14日放送内容より スズケン

慢性骨髄性白血病治療薬
メシル酸イマチニブ


愛知県がんセンター病院 病院長
大野 竜三

新薬STI571の開発経緯と効果

 ごく最近もう一つの有望な分子標的薬が、慢性骨髄性白血病に対し、極めてよく効くことが判りました。開発コード名をSTI571、一般名をイマチニブといい、昨年12月から発売されています。
 慢性骨髄性白血病は年間10万人当り1例程度の発生率です。
 発病時は慢性期にあり、白血球が増加している以外は、ほとんど症状もなく、通常の抗がん薬で白血球の増殖を抑えることができますので、患者さんは普通の生活を送ることができます。しかし、4・5年の経過で、移行期を経て急性転化します。急性転化しますと、通常の急性白血病よりも治療に抵抗性を示し、予後は絶対不良です。


図

 慢性骨髄性白血病には、フィラデルフィア染色体という異常染色体が見つかります。これは、9番染色体と22番染色体の一部が切れ、切れた部分が互いに入れ代わって再びくっつき、相互転座した染色体です。その結果、9番染色体にあるablという癌遺伝子が、22番染色体のbcrという遺伝子の後ろに移り、bcr/ablと言う融合遺伝子を作っています。
 この融合遺伝子が作る蛋白は、abl遺伝子だけが作っている蛋白にくらべ、非常に強いチロシン・キナーゼ活性をもっています。その結果、正常では、ある時期が来ると死ぬ運命にある白血球が死ななくなって、白血病が発生しているのです。


図

 STI571はこのチロシン・キナーゼのATP結合部位に作用して、その働きを阻害します。その結果、白血病細胞は生き続けることができなくなり、死滅していきます。
 STI571により、9割以上の慢性骨髄性白血病で、血球が正常化する血液学的完全寛解が得られます。そして、6割以上でフィラデルフィア染色体を持つ白血病細胞が完全消失するか、3分の1以下に減少する細胞遺伝学的効果が得られます。
 チロシン・キナーゼは、体内には、約60種類あって、細胞が働くためには必須の酵素です。しかし、STI571はこの内のわずか3種類にしか働かず、その一つが慢性骨髄性白血病の原因となっているablチロシン・キナーゼです。このような選択性がありますから、STI571の副作用は少なく、理想的な抗がん薬です。


提供 : 株式会社スズケン


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