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<スズケンDIアワー> 平成14年2月14日放送内容より スズケン

慢性骨髄性白血病治療薬
メシル酸イマチニブ


愛知県がんセンター病院 病院長
大野 竜三

インターフェロンとの相違点

 血液学的完全寛解になるだけでは、白血病が治ったとは言えません。しかし、インターフェロンにより、50%以上の患者さんで、血液学的完全寛解が得られるだけでなく、白血病細胞も完全消失ないしは減少する細胞遺伝学的効果が得られ、骨髄移植に匹敵するほど長期生存することが得られております。
 ただし、インターフェロンには、発熱、肝臓障害、うつ病などの副作用があり、また、連日の自己注射が必要です。


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 その点、STI571の副作用はインターフェロンよりも少なく、また、飲み薬ですから、患者さんのQOLは大分高くなります。
 STI571により細胞遺伝学的効果が得られた患者さんは、多分、長期生存するであろうと予測されています。しかし、慢性骨髄性白血病に対する治療の評価は7年から10年が必要です。STI571が出てから、まだほんの2・3年しか経っていませんので、果たして、この薬により慢性骨髄性白血病が本当に治癒するか否かは判っていません。
 さらに、耐性も生じることがすでに報告されており、十分注意する必要があります。
 ですから、現在、インターフェロンを使っていて、これがよく効いている患者さんは、やみくもにこの薬に変えるのではなく、インターフェロンが効かなくなったら、STI571に変えるのがベストであろうと考えています。
 STI571が効く他の2つのチロシン・キナーゼの一つに、c-Kitのチロシン・キナーゼがあります。実は、GISTないしは消化管間葉系腫瘍と呼ばれているがんは、c-Kit遺伝子に突然変異がおこり、チロシン・キナーゼの活性が高まって、がんが発生していることが判りました。GISTは従来の抗がん薬が非常に効きにくかったのですが、欧米での臨床試験では、5割以上の患者さんにこのSTI571がよく効いています。日本でも、GISTを対象にした治験が、今年の4月より始まる予定です。

白血病治療におけるSTI571の役割

 STI571はレチノイン酸に次いで、がんの薬物療法のパラダイムを変える新しい抗がん薬になりました。この二つの薬がたいへん良く効く一方で副作用が少ないという理由は、がんの原因そのものに選択的に作用しているからです。
 レチノイン酸は偶然発見され、後になって、がんの原因遺伝子異常に働いていることが判ったのですが、STI571は、初めからがんの原因となっている遺伝子異常を標的として開発された薬です。
 がんは遺伝子の病気です。最近の医学の進歩は、がんの遺伝子異常を急速に明かしつつあります。白血病は患者さんから沢山のがん細胞をいただけますので、がんの中では一番研究が進歩している分野です。今後、白血病以外のがんにおいても、がんの責任遺伝子が解明されると思います。
 それほど遠くない将来に、がんをひきおこしている責任遺伝子を標的にした選択的な分子標的療法が数多く開発され、がんを克服できるようになるものと期待しています。


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提供 : 株式会社スズケン


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