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<スズケンDIアワー> 平成14年3月28日放送内容より スズケン

腎移植後拒絶反応抑制薬
バシリキシマブ


新潟大学大学院医歯学総合研究科 機能再建医学講座 腎泌尿器病態学 教授
高橋 公太

こんにちは。新潟大学の高橋公太です。今日は今年の4月に発売されます腎移植後拒絶反応抑制薬であるヒトマウスキメラ型CD25モノクローナル抗体であるバシリキシマブをご紹介いたします。本剤を理解するためには、あらかじめ免役抑制薬における開発の歴史において触れておいたほうが理解しやすいと思いますので、まずその説明をいたします。

免疫抑制薬の開発の歴史

 免疫抑制薬の開発は、1958年にシュバァルツらがウサギの実験で6-メルカプトプリンが抗体産生を抑制することを発見したに始まりました。さらにこれよりも副作用が少ないアザチオプリンを英国のカーン教授らが臨床応用することにより、拒絶反応がある程度抑えられることが立証され、腎移植が慢性腎不全の根治的治療として脚光を浴びることとなりました。その他、1960年代にはステロイド剤が免疫抑制薬として使用されております。
 アザチオプリンの免疫抑制効果は、今日の新しい免疫抑制薬に比べますと弱く、白血球全体を抑制します。副作用として骨髄抑制、また肝障害があります。白血球減少症を起こしますと致命的な感染症が発生します。
 当時、移植というと拒絶反応=感染症、それは死を意味していました。その頃の移植のイメージが未だに脳裏に焼き付いて、現在でも移植に対してその当時の偏見を抱いている人がいます。拒絶反応を起こす主な免疫担当細胞はリンパ球ですので、その後リンパ球を選択的に抑制する薬剤の開発が進められました。
 1967年には米国の有名な移植医であるスターツル教授らが抗リンパ球血清を作製しましたが、ポリフローナル抗体という色々な抗体が含まれて選択性がないため、その効果はいまひとつでありました。また抗マウス血清で異種蛋白であるため、発生頻度は少ないですが、副作用として発熱、発疹など、またまれにアナフィラキシー・ショックなども報告されております。
 1970年代にスイスのボレル博士がヘルパーTリンパ球を選択的に抑制するシクロスポリンを発見し、1978年、前に述べましたカーン教授らがこれを臨床応用し、その免疫抑制効果が従来の薬剤に比べて数段優れていたため、腎移植はもとより、他の臓器移植の成績も飛躍的に向上いたしました。また、この薬剤がヘルパーTリンパ球に働いて、リンホカインの一種であるIL-2の産生を抑制することが明らかになりました。また、逆にIL-2の産生を抑制することがTリンパ球の増殖を抑え、ひいては拒絶反応を抑制することがわかりました。
 1990年代には、同様な免疫抑制メカニズムでさらに免疫抑制効果の強い国産品のタクロリムスが登場しています。また、急性拒絶反応の治療薬として、Tリンパ球全体を抑制する抗リンパ球モノクローナル抗体、ムロモナブCD3が登場しました。さらに副作用の少ない代謝拮抗薬が次々と臨床応用されています。


提供 : 株式会社スズケン


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