 クラドリビン
那智勝浦町立温泉病院 院長
待井 隆志
新薬“クラドリビン”とヘアリー細胞白血病
今日はヘアリー細胞白血病という変わった名前の白血病に驚くほどの治療効果が見られたクラドリビンという抗がん剤の話をします。
ヘアリー細胞白血病や慢性リンパ性白血病(CLL)といった慢性白血病では進行が遅いため、患者さんの多くは比較的長生きできますが、抗がん剤による治療は症状をとるのには有効ですが、治癒は得られません。このことは低悪性度リンパ腫の場合も同様で、これらの腫瘍に対する治療は長い間めざましい進歩が見られませんでした。
しかし最近、これらの低悪性度リンパ性腫瘍に有効な新薬の開発が相次ぎ、そのうちのいくつかは臨床の場でも使用可能になってきました。クラドリビンもその一つでヘアリー細胞白血病に著しい治療効果を示す他、CLLや低悪性度リンパ腫にも効果が認められています。
ヘアリー細胞白血病では、日本では特に稀な白血病ですので、まずこの白血病について少し解説します。
ヘアリー細胞白血病やCLLは、比較的高齢者に見られる慢性型のリンパ性白血病です。CLLでは多数の白血病細胞が末梢血に出現し、そのため白血球数が異常に増加しますが、ヘアリー細胞白血病ではヘアリー細胞と呼ばれる白血病細胞を多数見ることはむしろ少なく、白血球数の増える例は患者の1/4程度です。
また、CLLなどの慢性白血病と比較して、正常血球の減少の程度が強いのも特徴的とされ、このことは治療にも深く関係します。
白血球増加を伴わない慢性白血病では、診断がしばしば困難でヘアリー細胞白血病も再性不良性貧血や骨髄異形成症候群などと誤って診断されることがあります。血球減少症と脾腫を示す疾患を見た場合、この白血病は鑑別診断に含めて考えることが大切です。
ヘアリー細胞白血病の予後は、個々の患者さんによってかなり異なり、1、2年で死亡される患者さんから、中には10年を超えて生存する症例も見られます。ヘアリー細胞白血病の治療で臨床的に最も問題となるのは先に述べた血球減少症で、このため患者さんは貧血や白血球、血小板減少をきたし、感染症や出血傾向に苦しむことになります。
脾摘術は、多くの患者で血球減少症の改善に有効ですが、ある期間を経過すると再度悪化することが多く、一方従来の化学療法による治療の結果は惨憺たるものでした。この状況は治療抵抗性の再性不良性貧血や骨髄異形成症候群とあまり変わらず、対応が非常に困難でした。
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