 シベレスタット
熊本大学 第二外科 教授
小川 道雄
好中球の生体防御作用
生体はたえず病原体や異物などの侵襲にさらされております。そして、それを排除して生存しつづけるために、生体は多くの防御機構を備えております。これらの機構のうち、侵襲のごく早期に積極的に微生物や異種蛋白に攻撃を挑むのが好中球であります。種々のサイトカインやケモカインの作用によって好中球は炎症の場に遊走し、集積して生体の防御にあたります。
好中球が局所で生体防御にあたっている間は、非常に頼もしい味方であります。しかし、好中球がその強力な作用を過剰に発揮したとき、あるいは、それを適切な段階で抑えるための機構が十分働かないとき、守るべき生体側の組織が破壊される可能性が出てまいります。このとき好中球は手強い敵となります。つまり好中球は、一方では異物、細菌などを貪食、消化、殺菌することによって、生体防御のために大きな役割を果たしておりますが、他方では、好中球は生体の組織、構成蛋白を消化し、あるいは変成させることによって、生体を破壊に導く可能性をもっているのです。
好中球の持つ生体防御因子のうち、異物、細菌の破壊や殺菌に直接働いているのは、中性プロテアーゼと活性酸素です。中性プロテアーゼは、生理的条件である中性に至適pHを持つプロテアーゼで、その主なものはエラスターゼ、カテプシンG、コラゲナーゼであります。
好中球の中性プロテアーゼのうち、特にエラスターゼは基質特異性が低くて、生体の重要な蛋白のほとんど全てを分解しうる強力なプロテアーゼであります。しかも活性型として好中球から放出されます。

|