 ガチフロキサシン
長崎大学 第二内科 教授
河野 茂
ガチフロキサシンの開発の経緯
ここでもう一度、ガチフロキサシンの開発の経緯を述べてみたいと思います。
キノロン薬は6位にフッ素を付加することで抗菌活性が飛躍的に向上し、フルオロキノロンあるいはニューキノロンと命名されました。これは1978年以降、ノルフロキサシンが出現して以降のキノロン剤の特徴であります。
そして、その後多くのニューキノロン薬が臨床応用され、感染症の治療薬として重要な役割を果たしてきました。初期にはグラム陰性球菌に対しての感染症として尿路感染症、また消化管感染症などに用いられてきました。
我が国の製薬メーカーは、多くの優れたニューキノロン薬を開発し、その発展に大きく貢献しておりガチフロキサシンもその一つです。8位にメトキシ基を付加した構造は画期的なものであり、グラム陰性菌からグラム陽性菌に対する強い抗菌活性を示す特徴を有しており、また高い安全性を確立しています。
作用機序の特徴といたしまして、DNAジャイレースとトポイソメレースを強力に同程度阻害するため、耐性菌を誘導しにくいと考えられています。欧米では、既に臨床応用されており、その有効性と安全性は高く評価されています。特に市中肺炎に対しては、90%以上の高い有効率が報告されています。

ガチフロキサシンの安全性
キノロン薬は、他の薬剤との相互作用や副作用もしばしば問題になっていますが、ガチフロキサシンは、これらも軽微であり安全であることが知られています。例えばテオフィリンと併用した際は、ほとんどテオフィリンの血中濃度に影響がありません。したがって、テオフィリンの副作用が出にくいということになります。また、キノロン薬で問題になることが多い光毒性や心電図上のQT延長をこれまでの臨床試験ではほとんど認められておりません。近年、医療費の高騰に伴い、入院期間の短縮や治療の推進が求められています。軽症、中等症の呼吸器感染症に対しては外来治療が必要なものと思われます。
このような状況で強い抗菌活性と高い安全性を有するガチフロキサシンは、新世代のレスピラトリーキノロンとして臨床に大きく貢献してくれるものと期待が寄せられています。
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