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<スズケンDIアワー> 平成14年5月30日放送内容より スズケン

アセトアミノフェン中毒解毒剤
アセチルシステイン


(財)日本中毒情報センター 施設長
黒木 由美子

アセトアミノフェン大量摂取による肝障害の予防

 今回紹介いたします「アセチルシステイン内溶液」は、アセトアミノフェンの大量摂取時に発現する肝障害の予防に用います。この解毒剤の作用機序を理解するために、まず、アセトアミノフェン中毒時に引き起こされる肝障害について、その毒性発現機序から説明いたしましょう。
 アセトアミノフェンを経口摂取すると、その大部分が肝臓で、グルクロン酸抱合や硫酸抱合を受け代謝されますが、一部はチトクロームP-450代謝経路に入り、毒性をもつN-アセチル-p-ベンゾキノンイミンが生成されます。常用量のアセトアミノフェンであれば、この代謝物は肝臓のグルタチオンによって抱合され無毒化されますが、大量摂取時にはグルタチオンが急速に使用され、その生合成が追いつかず、グルチオンが枯渇してしまいます。そのためこの酸化活性代謝物N-アセチル-p-ベンゾキノンイミンが、細胞内高分子と結合して細胞壊死を起こし、肝障害や腎障害を発現します。
 この中毒を予防するために、細胞内に吸収されにくいグルタチオンの代わりに、細胞内に吸収されやすいグルタチオンの前駆体であるN-アセチルシステインを投与し、毒性本体の代謝を促進するというのが本剤の作用機序です。
 本剤の投与は、アセトアミノフェン摂取後なるべく早期に行いますが、8時間以内が望ましく、24時間以内であれば効果が認められると報告されています。

アセチルシステイン内用液投与の判断基準

 本剤を投与するかどうかは、下記のすべての点を参考にして決定してください。
 まず、アセトアミノフェンの血漿中濃度から判断する方法です。アセトアミノフェン中毒時に発現する肝障害を、血漿中濃度から予測するノモグラムとして、Rumack-Matthewのノモグラムがあります。
 これは、片対数グラフの横軸に「摂取後の経過時間」、縦軸に「血漿中濃度」をとったグラフで、摂取後4時間以降の血漿中濃度を用いて判定します。摂取後4時間までは血漿中濃度がピークに達していないため使用できません。N-アセチルシステイン投与の推奨ラインは、4時間後の血漿中濃度が、150μg/mlの点と、24時間後の5μg/mlの点を結んだラインです。このラインより上の血漿中濃度の場合は、本剤を投与します。

(図 ノモグラム)

 次は、アセトアミノフェンの摂取量から判断する方法です。血漿中濃度が迅速に測定できない場合でも、アセトアミノフェンとして、7.5gまたは150mg/kg以上の摂取が疑われる場合には、本剤を投与します。
 さらに、血漿中濃度や摂取量が目安以下であっても、本剤の投与を考慮すべき場合があります。
 配合剤としてエテンザミド、無水カフェイン、ブルムワレリル尿素が含まれる場合は、相互作用により毒性が強く発現する可能性があります。また、カルバマゼピン、イソニアジド、フェノバルビタール、フェニトイン、リファンピシンを服用している場合は、肝薬物代謝酵素の誘導によって毒性が強く発現する可能性がありますので、これらの場合には本剤の投与を考慮します。このほかアセトアミノフェンやアルコールの常用者、肝疾患のある患者、栄養状態が悪い患者では、低用量の摂取でもグルタチオンの枯渇が生じる恐れがありますので、投与を考慮します。
 なお、本剤は、アセトアミノフェンの単回過剰摂取によって発症した急性中毒には有効ですが、治療量以上を複数回投与して生じた中毒で、特に初回の過量摂取から24〜48時間以上経過している場合には、有効性は期待できないことが多いとされています。


提供 : 株式会社スズケン


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