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<スズケンDIアワー> 平成14年7月4日放送内容より スズケン

炭疽菌対応マニュアル


長崎大学熱帯医学研究所 感染症予防治療分野 教授
永武 毅

炭疽菌による感染症と研究の歴史

 昨年10月に起こった米国における炭疽菌を用いたバイオテロ事件は世界に大きな衝撃を与えました。本日は炭疽という感染症がいかなるものであるのか、また治療法はどういったものが最も適切であるのかを中心にお話しを申し上げたいと思います。
 炭疽菌はグラム陽性の大型の桿菌でございまして、芽胞を形成すると長い間(少なくとも十数年)栄養素の無い状態でも生存することができるのであります。芽胞は37℃で通常の培地でよく増殖を致します。本菌はもともと土の中に生息する細菌でございまして、草食動物のウシ、ウマ、ヒツジなどが感染をいたしまして、感染動物やその死体、さらには排泄物などと接触したヒトが感染をする、いわゆる人獸共通感染症でございます。
 炭疽菌の研究の歴史は古く、1877年にコッホが動物の病気、炭疽の原因菌として証明したことに始まります。1881年にはパスツールがワクチンを作っております。炭疽菌の特徴をまとめますと、増殖力が強く、莢膜を有し、かつ3種類の毒素を産生するということで感染後の症状は激しいものがございます。また、空気に触れますと芽胞と呼ばれる胞子を形成いたしますので熱や消毒剤にも抵抗性であるということになります。
 1979年4月ウラル山脈の東にございますスベルトロフスクの住民がインフルエンザ様症状後に激しい呼吸困難で2〜3日後に死亡するという事例が起こりました。この時の死者の数が68名で死因が炭疽でございました。大半が肺炭疽で、炭疽菌の吸入によるものと考えられたことから、後日、細菌兵器での事故であったと考えられることが、米国の学者らによって明らかにされました。日本においてもオウム真理教がバイオテロとして炭疽菌を用いたということが、記憶に新しい事でもございます。


提供 : 株式会社スズケン


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