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<スズケンDIアワー> 平成14年7月4日放送内容より スズケン

炭疽菌対応マニュアル


長崎大学熱帯医学研究所 感染症予防治療分野 教授
永武 毅

バイオテロに対する考えかた

 日本の社会の中で炭疽菌によるバイオテロをどう考えればよいのかを申し上げたいと思います。
 2001年10月から11月にかけまして米国内で起こりました、郵便を使った炭疽菌の感染事例は同一株で同一犯によると考えられております。この時の菌は、非常に微細な粒状に加工された炭疽菌芽胞を封入された手紙を送りつけることで、社会的にパニックを引き起こしたということで記憶に新しい訳ですが、全部で22名の感染者が確定をされております。そのうち、半数の11名が肺炭疽で、うち5名が死亡している。いわゆる、肺炭疽の45%が亡くなった、という高い死亡率となっているのでございます。
 しかし、この米国の事例を通して、私達が学び得ることは多いのでございます。
 まず、過剰反応、パニックにならないことが最も大切であると、米国民に対しても強調されてきました。恐ろしいと言われる肺炭疽は極めて希な感染経路によるもので、さらに炭疽菌は現代人の日常生活環境の中に通常、出現するものではないということですので、国民にはしっかりした情報の提示が必要です。草食動物との接点のある人の場合でも通常は皮膚感染によるものが大半です。この場合には十分診断、治療が間に合いますし、また日本国内どこでも治療薬は十分にあるということを知らしめるべきであるということでもあります。炭疽は手袋とマスクで完全に感染予防が出来ますし、体に付着した炭疽菌は丁寧に洗い流せばよいのです。日常の外出後の洗顔、うがい、手洗い、衣服の着替えなど、言わば健康な生活の基本姿勢がしっかりしていることが、大切だということを人々に再確認していただきたいのです。
 炭疽患者、あるいはその疑いのある患者さんが来院された場合、病院側として、どういう注意が必要か、どういう点にポイントがあるかということを、これからお話し申し上げたいと思います。最も大事なのは、病歴の聴取でございます。先程から申し上げておりますように、バイオテロの可能性がある場合に、それがどういう事態でのことであるのか。あるいは通常の炭疽ですと、感染動物、先程から申し上げております草食動物、とりわけ病死による死骸、あるいはその毛皮、骨などとの接触歴、そして最も医療者が忘れやすいのが昆虫の咬傷でして、これはサシバエ等に刺された事例がございますと、それは、注意を促しておきたいということでございます。感染した可能性のある食肉や水との接触あるいは、そういうものを摂取したという病歴も大事ですし、最近、海外旅行者が増えておりますので海外渡航歴、特にアジア、アフリカ、中東、南米等の1週間以内の渡航歴がございますと、それもやはり要注意となります。


提供 : 株式会社スズケン


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