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<スズケンDIアワー> 平成14年7月11日放送内容より スズケン

DI実例集(137)


昭和大学病院 薬剤部
竹ノ内 敏孝

主要な酸-塩基障害

 主な酸-塩基障害には、代謝性のアシドーシスとアルカローシス、呼吸性のアシドーシスとアルカローシスおよび混合型酸-塩基障害が認められます。
 患者が動脈血pHの低下が見られ、そのため酸血症となっているとしますと、低い血漿重炭酸イオン濃度は、代謝性アシドーシス、高い炭酸ガス分圧は呼吸性アシドーシスを示し、混合型の酸-塩基障害であることがわかります。
 患者の動脈血の値が、pH=7.45、炭酸ガス分圧=20mmHg、重炭酸イオン濃度=13mEq/Lであるとした場合、これはわずかに高いpH、重炭酸イオン濃度が高く、炭酸ガス分圧が低いことより急性の呼吸性アルカローシスであることと判断できます。
 急性の呼吸性アルカローシスの酸-塩基障害への腎および呼吸への代償は、炭酸ガス分圧が10mmHg下がるごとに、血漿重炭酸イオン濃度が2mEq/L下がると言われております。この場合、炭酸ガス分圧が標準値40mmHgから20mmHgまで急に落ちているので、本来血漿重炭酸イオン濃度は、標準値24mEq/Lから20mEq/Lに低下すべきであります。
 しかし、実際は13mEq/Lとなっており、予想よりもさらに低下しておりますので、呼吸性アルカローシスと代謝性アシドーシスの混合型であり、サリチル酸中毒患者のことが疑われます。
 代謝性アシドーシスでの過多な水素イオンの1/2以上は、細胞で飽和されます。この現象は、細胞内液より細胞外液へのカリウムの移動により行われます。
 無機酸の蓄積が原因でおこるアシドーシスは、血漿カリウムの上昇を示す傾向にありますが、有機酸の蓄積によるアシドーシスは高カリウム血症を起こしません。
 なお、カリウム欠乏の多くは低塩素性アルカローシスを伴うため、カリウムは塩化カリウムの形で投与することが合理的ですが、代謝性アルカローシスを伴う場合には、重炭酸イオンを産生するアスパラギン酸カルシウム、グルコン酸カルシウムなどの有機塩を用います。

(表4:主要な酸・塩基障害の特徴)

(表5:人間の主要な酸・塩基障害への腎臓および呼吸の代償)

アルキル化剤の働き

 血漿中で最も大きな緩衝作用を示すのは重炭酸-炭酸緩衝系で、その重炭酸イオンは、生体ではアルキル化剤として働きます。しかし、糖を配合したTPN輸液は、高濃度のブドウ糖やアミノ酸を安定化するために、pHが4〜5に調整されており、重炭酸ナトリウムを配合しても炭酸ガスが発生しその力価は保てません。またリンゲル液に重炭酸イオンを入れますと、カルシウムと反応して炭酸塩の沈殿を生じます。
 ほかのアルキル化剤には、乳酸と酢酸がありますが、乳酸は乳酸リンゲルとして用いられ、L体が肝臓・腎臓で代謝、酸化分解され、等モルの重炭酸を生じます。
 また、酢酸は生体内で酸化され、同じく等モルの重炭酸を生じます。ただし、代謝に糖が必要となりますが、骨格筋でも代謝されるという利点があります。


提供 : 株式会社スズケン


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