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<スズケンDIアワー> 平成14年7月18日放送内容より スズケン

気管支喘息治療薬
定量噴霧式吸入べクロメタゾン


昭和大学 第一内科 教授
足立 満

代替フロン噴射薬とベクロメタゾン吸入薬

 次に代替フロン噴射薬によるBDP吸入薬についてお話したいと思います。
 従来のBDPpMDI製剤に用いられているフロンガス(CFC;クロロフルオロカーボン)は骨格に塩素原子を含むオゾン層特定破壊物質であり、世界的に規制の方向にございます。わが国においても1996年1月から原料用特定フロンの生産が全廃となっております。この様な環境の中で、dry powder吸入薬(DPI)であるfluticasone propinateやbudesonideがわが国にも導入されておりますが、代替フロン噴射剤によるBDP吸入製剤の開発も期待されておりました。BDPはわが国の喘息予防・管理ガイドラインやGINA(Global Initiative for Asthma)といった世界的なガイドラインにおける成人喘息長期管理の標準的吸入ステロイド薬となっており、有効性や安全性に関する数多くのevidenceが蓄積されております。

プロピオン酸ベクロメタゾン(HFA-BDPMDI)の臨床成績

 この度新規に開発されましたプロピオン酸ベクロメタゾンを主薬とするHFA-BDPでございますが、噴射剤にHFA-134aが使用されており、本年4月に厚生労働省から承認を受けた薬剤であります。代替フロンHFA-134a(テトラフルオロエタン)は骨格に塩素原子を含まないことから、太陽光線による分解でオゾンを破壊する塩素原子を生じません。
 従来のCFCを噴射剤とするBDP吸入製剤(CFC-BDP)はBDPの懸濁液吸入でありますが、HFA-BDPであるプロビオン酸ベクロメタゾンでは、BDPの溶剤として無水エタノールを用い完全溶解としたため、アンダーセン型粒子径測定装置を用いて粒子径を測定いたしますと、肺内に効率よく送達される粒子経0.7〜4.7μmの割合がCFC-BDPの1.5〜3.8倍多いということが報告されております。Leachの報告では、CFC-BDPpMDIの粒子径は肺に到達する4.7μm以下では3.5〜4.0μmが比較的多く、噴射量の30%程度でありますが、実際に肺へ到達するのは10%に過ぎず、およそ90%は口腔咽頭に付着するということでございます。しかし、HFA-BDPpMDI(プロピオン酸ベクロメタゾン)の粒子径は噴霧量のおよそ60%が4.7μ以下であり、その平均は1.1μmであります。Tc標識BDP50μgの単回吸入試験では、健常者におけるHFA-BDPおよびCFC-BDPの肺への沈着率はそれぞれ55%、4%であり、口腔咽頭への沈着率はそれぞれ29%、94%でございました。喘息患者におけるHFA-BDPの肺への沈着率は56%、口腔咽頭への沈着は33%という結果がでております。HFA-BDPでは、噴霧されたBDP粒子の60%程度の粒子径が肺へ到達可能な4.7μm以下であり、平均は1.1μmであることから吸入補助スぺーサーを用いることなく肺への到達率が高く、CFC-BDP+大容量スぺーサーでは10数%であったのに比べますと驚異的に高効率であるということが言えます。

(表1:「BDP-MDIの薬剤沈着率」)

 次にプロピオン酸ベクロメタゾンの臨床成績についてお話したいと思います。HFA-BDP吸入製剤であるプロピオン酸ベクロメタゾンは、BDPの肺への沈着率が極めて高いことから、従来のCFC-BDP製剤を上回る抗喘息作用が期待されております。256名の中等症成人喘息患者を対象といたしまして、中等症に対しては低用量の400μg/日のHFA-BDPを6週間投与した検討では、basalineに比較して朝のピークフロー(PEF)は平均47.01リットル/分増加し、1秒量(%FEV1)は0.32リットル/秒増加し、いずれもプラセポ群に比較して有意でございました。また、吸入β2刺激薬の使用回数や夜間症状も減少しております。抗喘息作用におけるCFC-BDPおよびHFA-BDPの用量反応性を調べた検討では、CFC-BDP100μg、400μg、800μg/日およびHFA-BDP100μg、400μg、800μg/日投与の6群に分け、6週間観察しておりますが、CFC-BDPおよびHFA-BDPは共に%FEV1の改善効果において用量反応性を示すが、HFA-BDPの用量反応曲線はCFC-BDPに比較して左へシフトしており、HFA-BDPによる%FEV1の改善と同じ効果を得るためにはCFC-BDPは2.6倍の用量が必要であると計算されています。これらの結果は、HFA-BDPの抗喘息作用がCFC-BDPの2倍以上であることを示しております。

(図1:「予測値に対する%FEV1の基準値からの平均変化量」)


提供 : 株式会社スズケン


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