→ 番組表はこちら
→ ストリーミング版はこちら
<スズケンDIアワー> 平成14年7月25日放送内容より スズケン

第五回日本医薬品情報学研究会総会
学術大会より


昭和大学薬学部 医薬情報科学 教授
戸部 敞

「テーラーメイド医療のための情報」〜シンポジウムから〜

 シンポジウムは「テーラーメイド医療のための情報」と題して、製薬企業の立場から田辺製薬の宮城島先生に、臨床医の立場から昭和大学横浜市北部病院副院長の中島先生に、臨床薬剤師の立場から慶應義塾大学薬剤部長の谷川原先生に、それぞれお話しいただきました。
 さらに、テーラーメイド医療でその中心をなす、遺伝子情報を取り扱う上での、倫理的問題点を昭和大学教養部の田村先生にお話しいただきました。
 元来、医療はテーラーメイドであるべきですが、昨今の科学技術の発展により、患者さんの遺伝子情報に基づいた薬物治療の個別化が話題になってきて、テーラーメイド医療あるいはオーダーメイド医療などという言葉が生まれてきました。
 製薬企業ではテーラーメイド医療に向けて、薬物輸送、薬物代謝、受容体などの薬物代謝、薬物動態などの個人差に関連する遺伝子解析を精力的に進めており、医薬品開発を行ううえで、ヒト個人個人の遺伝子背景を考慮して開発するために、一塩基置換すなわちスニップスに関する情報を必要としていることを宮城嶋先生はお話しくださいました。
 臨床医の立場から、中島先生にはお話しいただきましたが、テーラーメイド医療のための情報は、病気を疾患として捉え、臓器あるいは組織、さらには細胞などの器質的変化として考えるだけではなく、疾患を病気と捉え、病気を持つ患者さんの状態を考慮して治療する考え方に必要な情報についてお話くださいました。
 病名は同じでも、その患者さんにとって、その病気がどのような意味をもつかは、個人の家庭の状況、社会での立場、人生観などによって異なり、これらを加味した治療こそが、一人ひとりに対応した適切な治療、即ちテーラーメイド医療の本質であるとお話しくださいました。
 谷川原先生は臨床薬剤師として、遺伝子情報の違いにより、薬物体内動態と薬物反応性が個人により異なることを、多くの事例を用いてご紹介くださり、遺伝情報に基づく薬物療法個別化の可能性をお話しくださいました。
 最後に、遺伝子情報は個人の究極の情報であり、住所や電話番号のように変えることの出来ない個人情報であります。従って、そのプライバシーは厳密に守られなければならないことから、倫理学者の立場から田村先生にお話しいただきました。
 遺伝子情報は最も個人的な情報でありますが、同時にその遺伝子情報の一部を血縁者と共有しており、しかもヒト遺伝子全体の情報は人類共通の財産であり、遺伝情報をめぐって「個人」「血縁者」「社会」、これらがどのような関係をつくっていけばよいのか、非常にデリケートな問題であることをご指摘くださいました。また、テーラーメイド医療は個人に適した医療として、もてはやされていますが、テーラーメイド医療は全ての患者さんに対して行われるのか、あるいは全ての疾患に関してテーラーメイド医療が可能なのか、テーラーメイド医療に関して受益の差が生じることはないのかなど、テーラーメイド医療に関する様々な問題点をご指摘くださいました。
 遺伝子情報を扱う上で、専門家はその研究も医療への応用も一般の人々の理解と支持を得られるような形で進められなければならないと結論付けられました。


提供 : 株式会社スズケン


前項へ 1 2 3 次項へ