→ 番組表はこちら
→ ストリーミング版はこちら
<スズケンDIアワー> 平成14年9月12日放送内容より スズケン

前立腺癌治療
酢酸リュープロレリン12週持続製剤


群馬大学 泌尿器科 教授
山中 英壽

前立腺癌治療と内分泌療法

 前立腺癌治療の3本の柱は手術療法、放射線療法、内分泌療法でありますが、これら治療法は病期に応じて、使い分けられます。すなわち原則的には限局癌に対しては手術療法、放射線療法で治療し、局所進展癌、転移癌に対しては内分泌療法での治療が行われます。前立腺癌は高齢者癌であることから、同じ病期であっても、その患者さんのもっている生命予後を考慮に入れての治療選択、すなわち余命や一般状態、合併症などを考慮して治療法が決定されます。
 先ほど、内分泌療法は局所進展癌、転移癌に対して用いられると述べましたが、もう少し詳しく述べますと、内分泌療法は局所進展癌に対しては、単独療法や放射線療法との併用療法で、転移癌に対しては単独療法が行われ、限局癌に対しても手術療法、放射線療法のアジュバント療法、ネオアジュバント療法として内分泌療法が行われます。このように前立腺癌に対しては幅広く、内分泌療法が行われますが、その大きな理由は前立腺癌が男性ホルモン依存性癌であることによります。血中男性ホルモン濃度を去勢レベルに低下されることや前立腺癌細胞の男性ホルモン依存性増殖機序を遮断することによって、前立腺癌を制癌することが可能となるからです。
 今まで血中男性ホルモン濃度を減少させる方法として両側精巣摘出手術やエストロゲン投与によるmedical castration が内分泌療法の主流でありました。しかし、両側精巣摘出手術は患者さんの精神的負担を伴う非可逆的な方法であること、エストロゲン投与は心血管系障害や肝機能障害を生ずる可能性があることより、これら治療と同等の治療効果があって、しかも副作用の少ない薬剤が求められてきました。近年、強力な生理活性作用をもつLH-RHアゴニストが合成され、この薬物の持続的投与により medical castration を引き起こすことが明らかになりました。

12週持続徐放性製剤の開発と特徴

 本日の話題の酢酸リュープロレリンも強力な生理活性作用を持ったLH-RHアゴニストの一つであり、持続的投与の初期には一過性のLH放出と血中テストステロンの上昇がみられ、持続投与3週後にはテストステロンは去勢レベル以下となり、その後去勢レベルが維持されます。しかし、酢酸リュープロレリンの半減期は静脈内投与では2.9時間、皮下投与で3.6時間と短いために生理活性作用持続のため、また高価である本薬の使用量を調節したいという経済性の観点からも臨床応用を可能にするには、DDS(drug delivery system)の技術を駆使して徐放性能を付与しなければなりませんでした。
 そのような観点から酢酸リュープロレリンにおいても徐放製剤が開発されました。今までは酢酸リュープロレリン徐放製剤としては4週持続徐放性製剤のみでありましたが、今年の8月30日に12週持続徐放性製剤が発売され、実地臨床の現場で使用可能となりました。一般的に、LH-RHアゴニストの徐放持続時間の調節は、徐放化基材の種類や性質を変更したりする製剤設計によって可能であります。酢酸リュープロレリンの4週持続徐放性製剤では徐放化基剤として、乳酸とグルコール酸のモル比3:1とした共重合体が使用されておりますが、今回発売の徐放性製剤ではグルコール酸を含まない種々の平均分子量のポリ乳酸の共重合体を使用して製剤設計が行われております。その結果、12週にわたって持続しての徐放が可能になったのです。


提供 : 株式会社スズケン


1 2 3 次項へ