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<スズケンDIアワー> 平成14年9月26日放送内容より スズケン

尋常性ざ瘡治療
リン酸クリンダマイシン外用薬


NTT東日本関東病院 皮膚科 部長
五十嵐 敦之

尋常性ざ瘡の発症機序と病型

 尋常性ざ瘡は俗にニキビともいい、主に思春期から20歳代にかけてみられる、毛包脂腺系の慢性の炎症性疾患であります。よく、青春のシンボルともいいますね。90%以上の人にできる、いわば生理的現象でもあるわけですが、見栄えの問題や日常生活上のわずらわしさということから、疾患として治療対象になるというわけです。好発部位は顔面、胸部、背部であり、顔面では前額部、頬、口の周囲、下顎部などに特に発症しやすい傾向があります。通常かゆみはありません。一般に脂漏肌の人にできやすいものです。女性では生理前に悪化することがあります。前額部では毛髪の接触という慢性の機械的刺激で皮疹が悪化します。ここではニキビの発症機序と病型、重症度判定、治療などについて述べたいと思います。
 まずニキビの発症機序ですが、思春期になると性腺の活動が盛んになり、性ホルモンが分泌されるようになります。そのなかのテストステロンが、皮膚の脂腺で5α-リダクターゼという酵素によってジヒドロテストステロンに変換され、これが脂腺の増殖を促し、その結果皮脂の分泌が亢進し、顔面の皮膚が光沢を帯び、脂っぽくなってきます。毛孔には常在菌が多数おりますが、そのなかのニキビ桿菌が皮脂を分解し脂肪酸を作り、毛孔を刺激するために毛孔出口の皮膚の角層が厚くなります。すると出口が狭くなるわけですから、毛孔に皮脂がどんどんたまっていくことになり、毛孔のところが盛り上がってきます。これを面皰といいます。
 面皰は、肉眼的には認められず組織学的にのみ確認される微小面皰として始まり、数ヶ月を経て径2mmまでの閉鎖面皰にまで成長します。閉鎖面皰は毛孔がほとんど開口しておらず、時に1〜2本の毛をもつこともあります。白色調を呈するため白色面皰とも呼ばれます。閉鎖面皰は開放面皰に移行するものもありますが、多くは炎症を起こして丘疹、膿疱へと変化していきます。開放面皰は毛孔が開口しているもので開口部が黒色を呈するため黒色面皰とも呼ばれます。頂点の黒色の点状物はよごれ、ケラチン、メラニンなどから成り、面皰圧出器で圧出すると角質物、皮脂、毛などからなる角栓が出てきます。
 これら面皰、特に閉鎖面皰に細菌感染などが加わって炎症を生じると、毛孔一致性の紅色丘疹、俗に言う赤ニキビとなります。さらに炎症が加われば膿疱、硬結、嚢腫、瘢痕などを生じます。すなわち、ニキビの皮疹には面皰形成までの非炎症性皮疹と丘疹、膿疱などの炎症性皮疹があることが理解いただけると思います。これらの皮疹がいろいろな程度に混ざりあうわけですが、どの皮疹が主体となるかによって面皰性ざ瘡、丘疹性ざ瘡、膿疱性ざ瘡、硬結・嚢腫性ざ瘡などと呼ばれています。しかし実際は、ニキビの臨床像は多彩でこれらの間の区別は明確なものではありません。

(図1:「閉鎖面皰主体の前額部のざ瘡」)

 一方でニキビの臨床像の特徴として年齢とともにある程度特徴のある、種々の臨床型に移行していくことが知られており、経過からみた臨床型分類をすることも可能です。
 はじめに脂漏型ですが、小学校高学年から中学生初期にかけてのニキビの初発時期は、眉間、鼻梁、鼻唇構などの脂漏部位に油性光沢が目立ち、毛孔性の帽針頭大の脂栓が集簇してみられるのですが、面皰はほとんどありません。このようなタイプを脂漏型と呼んでいます。
 尋常型は脂漏型に続いて先に述べた種々の皮疹が顔面全体に生じるもので、思春期に最も多くみられる病型です。胸部、背部にも皮疹がみられます。前額部のみに皮疹が限局している場合は前額型と呼ぶこともあります。この病態は20歳頃まで続くうちに、次の3型に変化していきます。
 一つ目は口囲型、これは主として口囲、鼻唇構などに皮疹が限局してくるものです。二つ目は顎骨部型、これは両側下顎骨部から顎下部を中心に皮疹が生じるもので、個疹は比較的大きく、紫紅色調を帯びることが多いようです。角栓が目立って、さわるとざらざらした感触があります。三つ目は月経前増悪型、これは生理前10日頃から一過性に皮疹の増悪を認めるものです。この増悪は顔面の皮疹に限局性で、主として顎、顔面側面、眉間に目立ちます。面皰をみることは少なく、後に瘢痕が目立って、色素沈着を残すこともあります。20歳代から30歳代前半の女性にこの傾向が強いようです。

(図2:「頬部にみられた膿疱性ざ瘡」)


提供 : 株式会社スズケン


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