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<スズケンDIアワー> 平成14年10月10日放送内容より スズケン

閉経後乳癌治療
アロマターゼ阻害薬エキセメスタン


大阪大学 腫瘍外科 講師
田口 哲也

転移性乳癌の薬物療法

 転移性乳癌の薬物療法には主にホルモン療法と化学療法がありますが、ホルモン療法の治療における位置付けをよく知る必要があります。Australian and New Zealand Breast Cancer Trials Groupの転移性乳癌を対象とした研究では、

ホルモン療法から始めて効果が無くなった時点で化学療法に移行する群、
逆に化学療法から始めてホルモン療法に移行する群、
ホルモン療法と化学療法を同時に施行する群

の三群に分けて検討され、再発後の生存期間に有意な差が無かったと報告されています。いずれの治療から始めても、また同時に始めても生存期間に差が無いのなら、まずは副作用の軽微なホルモン療法から始めて効果が無くなった時点で化学療法へ移行するのが、QOLの観点からは適切と考えられています。ただし、生命の危機が差し迫っている場合、これをlife threateningと言いますが、例えば多発性肝転移や呼吸困難を伴う肺癌性リンパ管症などのように、迅速な腫瘍縮小効果が求められる場合は、化学療法を第一選択にすべきであると考えられています。よって、生命の危機がない状態なら一般には、原発乳癌のエストロゲンレセプターまたはプロゲステロンレセプターが陽性ならホルモン療法から始めることがよいと考えられています。
 初回の第一次ホルモン療法が有効であった場合、第二次ホルモン療法が奏効する確率が高いので、第一次ホルモン療法有効例では、特に第二次ホルモン療法を試みるべきだと言われています。さらに、第二次ホルモン療法の有効例では第三次ホルモン療法も試みられます。閉経後乳癌には抗エストロゲン薬、アロマターゼ阻害薬、プロゲステロン薬と三種類の薬剤が、現在使用可能であることは先に述べました。そのため投与の順序を考慮しておくことが大切であります。以前は、閉経後乳癌に対する第一選択のホルモン療法は、抗エストロゲン薬タモキシフェンで効果が無くなった時点で第二次治療としてアロマターゼ阻害薬に切り替え、更に第三次治療としてプロゲステロン薬を使用するという治療方針で閉経後乳癌患者のホルモン療法を行ってきました。しかし、近年第三世代のアロマターゼ阻害薬(アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン)の第一次治療としての有用性が確立されはじめるのに伴い、今までの治療方針が変更されつつあります。すなわち、閉経後乳癌の第一選択のホルモン療法は、今後はアロマターゼ阻害薬が主体になると思われます。

「アロマターゼ阻害剤の種類と構造」

エキセメスタンの作用機序

 エキセメスタンは、ステロイド系アロマターゼ阻害薬で、最近 国内でも臨床使用が可能になりました。エキセメスタンは、エストロゲンの材料であるアンドロゲンと同じステロイド骨格を有し、アロマターゼのアンドロゲンレセプターと不可逆性に結合して、アロマターゼを不活性化いたします。そのため、非ステロイド系アロマターゼ阻害薬とは作用点が異なり、それらとの交叉耐性が少ないと考えられています。
 開発時の第I・II相試験では、一日量600mgまで投与量が増量されました。しかし忍容性は高く、最大耐容量が得られないほどでありました。また、一日の服用量10〜25mgでは、血漿エストロゲンを治療前レベルの6〜15%にまで抑制いたしました。閉経後の進行再発乳癌女性に対する二つの第II相試験の奏効率は、それぞれ22%と28%であり、奏効率に24週以上の病状安定率を加えた臨床的成功率、すなわち臨床的有用率は47%と48%でありました。
 閉経後のタモキシフェン耐性の転移性乳癌女性に対する、エキセメスタンとプロゲステロン薬であるメゲストロールとの比較による第III相試験の奏効率は、エキセメスタンが15%、メゲストロールが12.4%で臨床的有用率はそれぞれ37.4%と34.6%でありました。また観察期間中央値49週における、病状進行までの期間(TTP)と生存期間(OS)はともにエキセメスタンが勝っていました。


提供 : 株式会社スズケン


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