→ 番組表はこちら
→ ストリーミング版はこちら
<スズケンDIアワー> 平成14年10月17日放送内容より スズケン

DI実例集(138)


千葉大学 薬剤部 副部長
中澤 一純

抗血小板薬の種類と作用機序

 急性冠症候群は、その原因が冠状動脈の血栓症であり、血小板の果たす役割は大きく、血小板機能を抑制することにより、発症予防および進展阻止に抗血小板薬が有効であります。抗血小板薬の主な適応疾患として、不安定狭心症、冠動脈バイパス手術後の血管閉塞予防、心筋梗塞再発予防、PTCA後の再閉塞予防などがあげられます。現在、作用機序の異なる抗血小板作用を示す薬剤が治療に使用されており、以下に簡単に述べてみたいと思います。

(資料3:「抗血小板作用を有する主な薬剤」)

 アスピリンは、現在最も繁用されている抗血小板薬で平成12年11月に適応症が承認されました。その作用機序は血小板および骨髄巨核球のシクロオキシゲナーゼを不可逆的にアセチル化し、酵素活性を抑制することにより、トロンボキサンA2の合成を阻害することで、血小板凝集抑制作用を示します。血小板寿命(7〜10日)の間作用が持続し、血小板凝集抑制作用を示します。しかし一方で投与量が多い場合、血管内皮細胞における強力な凝集抑制作用を示すプロスタサイクリンの合成も阻害するため、効果が不十分となるアスピリンジレンマが生じる可能性もあります。
 抗血小板療法の大規模臨床試験の結果では、アスピリンの投与量による血栓の再発予防には80〜100mg/日の投与量でよいと考えられています。
 塩酸チクロピジンは、作用機序が不明な点が多く、肝での代謝物が活性を示し、服用後約24時間で血小板のアデニル酸シクラーゼを活性化し、血小板内のcAMP産生を高め血小板凝集能を抑制すると考えられています。抗血小板作用はアスピリンと同様に不可逆的であり、その効果は8〜10日間持続すると考えられています。
 冒頭にも述べたとおり、本年7月に緊急安全性情報が配布され、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、無顆粒球症、重篤な肝障害などの重篤な副作用の発現により死亡例も報告されており、その発現が投与開始2ヶ月以内であることから、投与開始2ヶ月間は2週間投薬、および定期的な血液検査が必要と思われます。また、有効性と安全性を確保する意味から、いたずらに長期投与は避けるべきであると考えます。
 シロスタゾールは、血小板および血管平滑筋のcAMPホスフォジエステラーゼを特異的に阻害することにより抗血小板作用、血管拡張作用を発揮します。投与後3〜4時間で凝集が抑制され、投与中止後48時間以内に作用が消失します。アスピリンとの比較試験において、冠動脈のインターベンション後イベント発生の抑制、血管内腔狭窄の抑制に有効であるとの報告もあります。さらに、チクロピジンにない血管平滑筋の増殖予防効果が認められると報告されています。
 ベラプロストナトリウムは、プロスタグランジンI2誘導体であり、血小板および血管平滑筋のプロスタサイクリン受容体を介して細胞内cAMP濃度の上昇、Ca流入抑制により抗血小板作用、血管拡張作用を発現します。
 イコサペント酸エチルは、血小板凝集抑制作用、動脈の進展保持作用、中性脂肪やコレステロールの低下作用が認められています。血小板凝集抑制作用は血小板膜リン脂質のEPA含量を増加させ、膜からのアラキドン酸代謝を阻害することにより、トロンボキサンA2産生を抑制するためと考えられています。
 クロピドグレルは日本未発売ですが、塩酸チクロピジンと同じ骨格を有し、同様の作用機序により強い血小板凝集抑制作用を有すると言われています。我が国で行なわれた第1相臨床試験において、50〜75mgの用量で塩酸チクロピジン200〜300mgに相当する凝集抑制作用を示し、また肝障害、好中球減少などの副作用の頻度も低いと言われています。大規模臨床試験で、クロピドグレル群とアスピリン群においてエンドポイントを心筋梗塞などの血管性事故および死亡について1〜3年間調査したところ、年間発症率はクロピドグレル群で5.32%とアスピリン群に比較して有意に低下することが認められました。


提供 : 株式会社スズケン


前項へ 1 2 3 次項へ