<スズケンDIアワー> 平成15年1月23日放送内容より |
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東京医科大学病院 薬剤部 主査
小林 仁
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(1) | 肺胞の表面積がとても広く、インスリンなどの小さな分子を良く吸収する |
(2) | 速攻型インスリンと同じ血中濃度が得られ、かつ作用時間が短い。 |
(3) | 個体差が少ない。 |
以上の理由でこのルートでのインスリン投与が検討されてきました。また噴霧インスリン製剤は、乾燥したインスリンの粉末を使用することから、力価の低下や細菌汚染の問題を回避できるというメリットもあります。その一方、インスリンを大量に必要とすることによる医療経済上の問題、喫煙者には適さない、肺機能に問題のある患者には使用できないなどのデメリットもあります。噴霧インスリン製剤は、1型および2型糖尿病患者とともにインスリンリスプロと同等の血統降下作用が認められ、今後糖尿病患者の生活の質を向上させるインスリン製剤として期待されます。インスリンの投与経路として、肺胞以外に眼瞼粘膜、鼻孔粘膜、口腔粘膜、上部腸管投与、直腸投与など経粘膜的投与の検討が行われています。特に、上部腸管投与は内因性のインスリンと同じ経路を通り、さらに注射薬で問題となる高インスリン血症を起こしにくいというメリットから、インスリンの理想的な投与経路と期待されています。しかし、生体膜の透過性の低さから、まだ実現に至りません。また近年、コンゴ民主共和国の植物から採取された子嚢菌一種の培養液中からインスリン受容体活性を有する物質が発見され報告されました。動物実験でインスリン受容体活性を向上させる薬剤として期待されており、人にそのまま適用できるか、今後臨床試験の結果が待たれます。インスリンは、発見され80年が経過しました。その間にインスリンは、遺伝子工学をはじめとする技術の進歩に伴い、より生体のインスリン分泌を模倣する製剤、患者生活の質を向上させる製剤の開発が進められてきました。今後どのようなインスリン製剤が開発されていくのか期待されます。
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