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<スズケンDIアワー> 平成15年2月20日放送内容より スズケン

夜尿症治療薬
酢酸デスモプレシン点鼻スプレー


埼玉県立小児医療センター 院長
赤司 俊二

薬物治療の留意点

 本薬の副作用で最も注意するものは水中毒です。薬理作用から考えて過剰な水分を摂取した時でも抗利尿作用が発揮され、時に水中毒の発生がみられます。国内で実施した夜尿症に対する3つの試験では1例も水中毒の報告はありませんでしたが、すでに発売されている酢酸デスモプレシン製剤において23例が報告されています。水中毒の初期症状は頭重感、食欲低下、全身倦怠感などであり、程度の進行と共に意識障害、けいれんなどの脳浮腫症状が出現します。もともと夜尿症児は水分摂取量が多い傾向にあり、点鼻3時間前より飲水を控えることが本薬投与の大前提となります。小児では喘息、自家中毒発症時等あるいは一般の発熱時でも飲水を積極的することが症状の進行を抑えるポイントとなりますが、これらの疾患で意識的に飲水しているとき、あるいは点滴治療を受けているときには本薬の使用は中止します。
 また、三環系抗うつ薬には抗利尿ホルモン分泌増進作用がみられ、本薬と三環系抗うつ薬との併用は水中毒が発生しやすいと言われており、十分な飲水制限が必要となります。
 いずれにしろ塩分制限も含めた飲水量のコントロールが副作用を予防するためにも、また夜尿からの自立を早めるためにも必須の事柄で、こうした生活上の注意ができない子どもには本薬の使用は勧められません。
 夜尿症への本薬の投与期間は短くても数ヶ月、時には数年となります。しかし、夜尿症における薬物治療はあくまで対症療法であることを考えると、数ヶ月に一回は治療を中止して患者の夜尿の状態を観察するとともに、安全性の面においても定期的に患者の状態を把握し、観察する必要があります。
 こうしたホルモン薬の長期投与で問題となる患者自身の抗利尿ホルモン分泌の抑制はみられません。

酢酸デスモプレシンの適用範囲

 本症に本薬を用いる目的は、短期的にはその子のもっている膀胱容量以内に夜間尿量を減少させることです。長期的には、本薬投与によりもたらされる夜尿をしない習慣が安定した睡眠リズムをもたらし、この安定した睡眠リズムが本来の夜間の抗利尿ホルモンの分泌増加、あるいは膀胱容量の増大をもたらし、投与中止後も多尿が改善し、夜尿を再発しなくなることです。
 夜尿自体は自然軽快するものであり、また夜尿が身体的に悪影響するものでないことからとかく放置されがちな病態であります。しかし、夜尿が年長児まで持続している場合には夜尿をしていることでの自信の喪失が心理面、社会面、生活面に様々な影響を与えています。こうした心理面、生活面での影響は夜尿の自立を遅らせる要因ともなり、悪循環に陥っている場合が少なくありません。本薬が夜尿に悩んでいる多くの子供達、家族の福音になることは間違いありません。
 しかし、本薬はすべての夜尿症に有効なものではなく、起床時尿比重あるいは浸透圧より対象症例を十分に見極めた投与を行うとともに、投与中の水中毒発生予防に細心の注意が必要です。


提供 : 株式会社スズケン


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