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<スズケンDIアワー> 平成15年3月13日放送内容より スズケン

味覚障害を起こす薬とその治療について


日本大学 耳鼻咽喉科 助教授
池田 稔

味覚障害とは

 本日は薬剤服用を原因とした味覚障害についてお話し致します。
味覚が障害される原因には、末梢受容器における問題から末梢神経、さらには中枢神経系の問題まで様々です。
 また、味覚の異常に関する患者の訴えにもいくつかあります。
 最も多い訴えは、単純に味覚が分らなくなったというもので、味覚異常症例の約80%を占めます。次に多いのは、口の中が苦いとか、塩辛いと訴える自発性異常味覚です。その頻度は約15%になります。その他、特定の味が分らないとか、味を取り違えるといった訴えもあります。
 本日お話しする薬剤性味覚障害では、それらの症状のうち、味覚の低下と自発性の異常味覚、特に苦味を訴える症例が一般的です。

薬剤起因の味覚障害

 さて、本邦における味覚障害患者数は年間14万人と推定され、大変多いものであると言えるでしょう。
味覚障害は50歳から60歳に症例数のピークを持つ、高齢者に多い疾患です。中でも、薬剤性味覚障害は味覚障害の約20%を占め、最も多い原因の一つです。特に高齢の症例で増加し、70歳以上の症例では約35%が薬剤性味覚障害で占められます。
薬剤の使用上の注意に、副作用として味覚に関する異常がはっきり記載されている薬剤は、一般名称として150種類以上の多岐にのぼります。これらの多くは副作用に「味覚障害」あるいは「味覚異常」と記載されていますが、「自発性の苦味」に関するものも多く見られます。
 味覚障害の原因薬剤の一部をあげますと、高尿酸血症治療薬のアロプリノール、消炎鎮痛薬のジクロフェナクナトリウムやイブプロフェン、抗ウイルス薬、INF-α、抗血小板薬、副腎皮質ホルモン、各種ACE阻害薬、β遮断薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、ループ利尿薬、不整脈治療薬、抗菌薬としてはテトラサイクリン、ニューキノロン、マクロライド、合成ペニシリンなどがあり、その他各種の抗悪性腫瘍薬、三環系あるいは四環系の抗うつ薬、抗パーキンソン薬、各種アレルギー治療薬等々、多数あります。
 また、自発性の苦味を生じる薬剤としては、睡眠薬、抗うつ薬、β遮断薬、ヒトエリスロポエチン製剤などがあり、まさに味覚障害の原因薬剤は多種多様です。
 このような薬剤性味覚障害の発症機序として、これまでのところ薬剤の金属キレート作用、特に亜鉛に対するキレート作用が指摘されてきました。
 そこでまず、味覚障害と亜鉛との関係を簡単に述べたいと思います。
 亜鉛欠乏が、味覚障害の原因となることが認識されたのは1963年、米国のPrasadが、中近東にみられた、コビト症を主症状とした亜鉛欠乏症の症例群を報告し、その随伴症状の一つに、味覚・嗅覚障害をあげて以来のことといえます。
 亜鉛はヒトの必須微量元素の一つであり、亜鉛酵素として多くの重要な代謝に関与しています。
 ラットを亜鉛欠乏状態に飼育すると、30%から70%に味覚障害が出現してきます。このようなラットでは通常は10日程度で入れ替わる味蕾の、味細胞のturn over時間が遅れてきます。また、味蕾の微細構造にも顕著な障害の所見が生じてきます。
 つまり、味覚の末梢受容器を維持していくために、亜鉛が重要な役割を果たしているわけです。


提供 : 株式会社スズケン


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