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<スズケンDIアワー> 平成15年3月27日放送内容より スズケン

病態シリーズ(20)
糖尿病と血管内皮細胞機能障害


獨協医科大学 内分泌科 助教授
服部 良之

Statin投与と内皮依存的血管拡張反応

 血管内皮機能は上腕動脈の内皮依存的血管拡張を超音波あるいはプレチスモグラフを用いて評価することができます。最近われわれは高コレステロール血症を合併する糖尿病患者にHMG-CoA還元酵素阻害剤(statin)を投与し、内皮依存的血管拡張をプレチスモグラフを用いて検討いたしました。

(資料2:「Statin治療前後での内皮依存的血管拡張反応」)

 Atorvastatinを12週間投与し、その前後で内皮依存的血管拡張反応(FMD)を比較いたしました。そうしますと、有意に増大が認められました。同時に測定いたしました血漿中のNOxすなわちNO3-+NO2-の濃度の有意な上昇とNOSのcofactorであるtetrahydrobioptein濃度の上昇が認められました。また、酸化ストレスのマーカーである8-イソプロスタンの有意な低下と高感度CRPの低下が認められました。血糖コントロール状態に変化はなく、FMDの改善はNO産生および活性の上昇の結果であると考えられました。

(資料3:「Statin治療前後での血漿NOx」)

 statinは血管生物学的影響として、血管内皮細胞(EC)のeNOSの活性を上昇させることが知られています。そこで、私どもはstatinによるNO産生増強効果に関して、eNOS自身への影響およびそのcofactorであるtetrahydrobiopterin代謝への影響という観点から培養血管内皮細胞を用いてそのメカニズムについて検討をいたしました。

(資料4:「培養血管内皮細胞のStatin処理によるGTP」)

 tetrahydrobiopterin合成の律速酵素であるGTPcyclohydrolase I(GTPCH)およびeNOSのmRNAレベルをRealtime PCR法で定量いたしますと、cerivastatinはGTPCHおよびeNOSのmRNAレベルを上昇させました。このときHPLCにて測定した細胞内tetrahydrobiopterin濃度はcerivastatinの濃度依存的に上昇していました。また、cerivastatinは細胞内の酸化型biopterinの濃度にはほぼ変化を与えずにtetrahydrobiopterin濃度を上昇させ、citrulline assayにて測定したeNOS活性を上昇させていました。cerivastatinはeNOSのmRNAを安定化し上昇させ、一方、GTPCHの転写の活性化を引き起こすことがわかりました。cerivastatinによるGTPCHおよびeNOS mRNAの上昇はメバロン酸およびゲラニルゲラニルピロリン酸の添加によって消失しました。このことを更に検討いたしました結果、statinによるメバロン酸の欠乏さらにゲラニルゲラニルピロリン酸の減少がRhoの活性を低下させることが機序の少なくとも一部であると考えられました。fluvastatinにても同様の影響が認められました。
 以上の結果より、内皮細胞においてstatinはNOSのレベルの上昇をそのcofactorであるtetrahydrobiopterinレベルの上昇とともに誘導し、NOS活性を高め、uncouplingと呼ばれるNOS自身よりのsuperoxideの産生を防御し、同時に酸化ストレスを低下させNOの不活化を抑制し、血管保護的役割を果たしているものと考えられました。


提供 : 株式会社スズケン


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