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<スズケンDIアワー> 平成15年4月3日放送内容より スズケン

薬物相互作用発生の予測


九州大学大学院 薬学研究院 臨床薬学 教授
澤田 康文

薬物相互作用の分類とファーマコキネティクス

 薬物相互作用が起こりうるかどうかを予測する方法についてお話しします。薬物相互作用には大きく分けてファーマコキネティクスに基づく相互作用とファーマコダイナミクスに基づく相互作用があります。

(資料2:「薬物相互作用の分類」)

 第一に、ファーマコキネティクスに基づく相互作用についてお話ししますが、更に、予測可能な相互作用と予測が困難な相互作用に分けることができます。予測可能な相互作用としては、薬物の血液中濃度が上昇したり低下したりするケースがあります。薬物の消化管吸収過程、消化管や肝臓での代謝過程、腎臓からの排泄過程において解毒酵素やトランスポーターが阻害されたり誘導されたりする場合であります。特に解毒酵素として消化管や肝臓に発現しているチトクロームP450(CYP)が重要でありまして、薬物によって解毒を担うCYPアイソフォームが違っていたり、また複数のCYPによって代謝される場合もあります。このCYPが関係した薬物代謝に関する相互作用例は極めて多く、臨床上問題となる殆どの相互作用がこの範疇に入ります。

(資料3-a,b,c「チトクロームP−450の主な分子種と基質となる代表的な薬物」)
(資料3-a,b,c「チトクロームP−450の主な分子種と基質となる代表的な薬物」)
(資料3-a,b,c「チトクロームP−450の主な分子種と基質となる代表的な薬物」)

 例えば、抗真菌薬のイトラコナゾールは、カルシウム拮抗薬でありますフェロジピンのCYP3A4を介した解毒代謝を阻害して、その血液中濃度を上昇させることがあります。現在、予測技術が進んでおりまして、どの薬物がどのCYPアイソフォームで解毒されるか、また阻害薬となるか、更に誘導薬となるかなどの情報は非臨床試験で得ることが可能となっております。また消化管、腎臓、肝臓などに発現しておりますP-糖タンパク質というトランスポーターについても、どの薬物がこのトランスポーターの基質となるか、また阻害薬となるか、更に誘導薬となるかなどの情報を非臨床試験で明らかにすることが可能です。

(資料4:「チトクロームP−450を阻害する薬物」)

 例えば、マクロライド系抗生物質のクラリスロマイシンは強心配糖体ジゴキシンのP-糖タンパク質による消化管分泌を阻害して、その血液中濃度を上昇させます。
 一方、併用によって血液中濃度には変化はみられないけれども、臓器・組織中濃度が変化するという相互作用が考えられます。例えば、血液脳関門において薬物の脳内移行を制限する排出機能タンパク質であります「P-糖タンパク質」を阻害する薬物を併用すると、P-糖タンパク質の基質薬物の脳内濃度が上昇することになります。この相互作用の有無についても非臨床試験からある程度推定することが可能です。一方、予測が困難な場合としては、薬物の吸収・分布・代謝・排泄機構が明らかになっていない、即ちそれらを担う機能タンパク質が明らかになっていない場合です。このようなケースでは、まず薬物の吸収代謝・輸送メカニズムなどを分子的に明らかにすることが必要であります。


提供 : 株式会社スズケン


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