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<スズケンDIアワー> 平成15年4月10日放送内容より スズケン

DI実例集(140)
ニフェジピンカプセルの舌下投与の安全性について


北里研究所病院 薬剤部長
厚田 幸一郎

添付文書の改訂

 米国ではニフェジピンカプセルには高血圧症の適応はなく、医師の判断で使用されていました。1996年1月、米国食品医薬品局(FDA)は、ニフェジピンを高血圧症に対して使用しないよう呼びかけるとともに、急性心筋梗塞や不安定狭心症の患者には投与を避けるよう勧告を出しました。
 これを受けて我が国でも1996年8月の医薬品副作用情報No.138において、「ニフェジピンの適正使用について」を掲載し、急性心筋梗塞患者に対し投与禁忌、不安定狭心症患者に対しては慎重投与とする添付文書の改訂を行い、注意を喚起しました。
 しかし、この改訂ではその他の高血圧症に対する使用については、言及していませんでした。一方、米国では翌1997年に「高血圧の予防、発見、診断、治療に関する米国合同委員会の第6次報告」で、高血圧緊急症の治療にニフェジピンの舌下投与がこれまで広く用いられてきたが、使用に伴ういくつかの重篤な副作用が報告され、血圧の低下速度や降下の程度が調節できないため使用すべきではないという勧告を出しました。
 我が国においては、2000年6月に日本高血圧学会から発表された「高血圧治療ガイドライン2000年版」において、“高血圧緊急症および切迫症に対するニフェジピンの舌下投与は、過度の降圧や反射性頻脈をきたすことがあり、原則として用いない”旨が記載されました。
 しかしながら、この時点においても舌下投与による過度の降圧の報告が数例あったこと、さらに反射性頻脈の報告がなかったこと、また「使用上の注意」においてこれらの副作用に関する注意を喚起していたことから、添付文書の改訂などの新たな対応は取られませんでした。そのため、ガイドラインで舌下投与を禁止するよう勧告したにもかかわらず、その認知度は低く、依然として舌下投与が行われていました。
 その後、ニフェジピンカプセル舌下投与時の過度の降圧例が毎年報告されていることから、2002年10月に添付文書の内容を改定し「用法・用量」の項から、速効性を期待する場合の投与方法に関する記載を、さらに舌下投与における薬物動態の記載をそれぞれ削除するとともに「使用上の注意」の項で、「速効性を期待した本剤の舌下投与は、過度の降圧や反射性頻脈をきたすことがあるので、用いないこと」と記載されました。

(資料2:「高血圧緊急症に対するニフェジピン舌下投与禁止までの流れ」)

 短時間作用型ニフェジピンカプセルの舌下投与が禁止されたことにより、高血圧緊急症および切迫症の治療は、先の高血圧ガイドラインに示されるように、一般的にジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬の内服投与が推賞されています。ただし、数分単位の緊急な降圧を必要とする場合などは、ニカルジピンやニトログリセリン等の非経口薬によって厳重なモニタリングを行いながらコントロールすることが奨められています。経口投与による治療では、過度な降圧が認められた場合投与した薬剤の除去はできませんが、注射による治療は副作用が起きたら直ちに投与を中止することができるからです。
 以上、高血圧緊急症に対するニフェジピンの舌下投与禁止についてお話致しました。


提供 : 株式会社スズケン


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