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<スズケンDIアワー> 平成15年4月24日放送内容より スズケン

透析患者の高リン血症治療薬
塩酸セベラマー


信楽園病院 副院長
鈴木 正司

phosphate binderの歴史

 リン吸着薬phosphate binderの歴史を見てみますと、リンは、陰性荷電性物質ですので、陽イオンと結合させて非吸収性の化合物を形成させれば、吸収されないまま糞便中へ排泄させることができます。1970〜80年代にかけまして、この目的でアルミニウム化合物(水酸化アルミゲル)を多用されました。しかし、アルミニウムが吸収されて体内に蓄積しアルミニウム脳症、重篤な骨軟化症を誘発することが知られるようになりました。
 1980〜90年代にかけましてはアルミニウム化合物に代わり、カルシウム化合物が登場し、現在も沈降炭酸カルシウム、酢酸カルシウムなどが広く使われております。また、マグネシウム化合物もリンを吸収することで実際に使われております。しかし、カルシウム製剤の投与を行いますと、いずれも血清カルシウムを上昇させますのでビタミン D治療を進める上での大きな障害となります。また、マグネシウム製剤は血清マグネシウムを上昇させるという側面がございます。さらに遅ればせながら、1992年に我が国では透析患者へアルミニウム製剤の投与が禁忌となりました。そして2003年、新しいリン吸着薬塩酸セベラマーがいよいよ登場いたします。
 その他の高リン血症の治療薬を少しお話してみますと、ランタン、ジルコニウム化合物なども検討されておりますが、現在のところ実用化に至っておりません。新しくは胆汁酸を吸収する高コレステロール血症治療薬コレスチミドがリンを吸着するために実際に使われております。同じく高コレステロール治療薬でありますニセリトロールにもリン低下作用があります。この場合には多分に腸管でのナトリウム/リン・コトランスポーターの作用を阻害するためリンの吸収が阻害されるという風に考えられています。しかし、この薬は残念ながら血小板減少、貧血憎悪などの副作用があり広く使用されておりません。

塩酸セベラマーの臨床成績

 新しいphosphate binderである塩酸セベラマーですが、本薬はアルミニウムもカルシウムも含有しないポリカチオン・ポリマーで白色ないしわずかに黄色の粉末でございます。本薬1g当り約170mgのリン酸イオンを吸着でき、その吸着能はpHレベルに左右されません。したがって3gの内服で約500mgのリンを吸着して排泄除去できることになります。因みに炭酸カルシウムはアルカリ状態では吸着能が著しく低下することが知られています。本薬は、米国、欧州連合ではすでに承認されており、日本でも2003年1月に製造承認が得られております。

(資料1:「リン吸着作用(in vitro)」)

 では、塩酸セベラマーの臨床効果はどのようなものでしょうか。血液透析患者での炭酸カルシウムとの比較試験の結果から見てみますと、本薬は血清リン濃度を用量依存性に低下させました。炭酸カルシウムの内服を中止した後の血清リン濃度が8mg/dL未満では、1回1gr×1日3回より開始。血清リン濃度が8mg/dL以上では、1回2gr×1日3回より開始しております。目標血清リンレベルを4〜6mg/dLとして投与量を増減する方法がとられ、最高使用量は1回3gr×1日3回までとされました。

(資料4:「臨床成績―第・相比較試験〜血清カルシウム・リン積の推移」)

 その結果は、塩酸セベラマーの投与8週目での目標累積達成率は92.4%と極めて高いものでありました。血清カルシウムの有意な増加もみられず、カルシウム×リン積は72.35から51.39へと低下しました。一方では炭酸カルシウム群でも血清リンは同様に低下しますが、血清カルシウムは有意に上昇し、カルシウムリン積も上昇いたします。また、CAPD患者に本剤を投与した場合でも、血清リンは低下し血清カルシウムは変わらず、カルシウムリン積は有意に低下いたしました。


提供 : 株式会社スズケン


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