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<スズケンDIアワー> 平成15年5月8日放送内容より スズケン

病態シリーズ(21)
ギラン・バレー症候群


獨協医科大学 神経内科
薄 敬一郎

ギラン・バレー症候群とは

 今回は、ギラン・バレー症候群(GBS)の、臨床像や発症機序、治療についてご説明いたします。
 GBSは、急性に発症する四肢の筋力低下を主な症状とする末梢神経疾患です。急性に四肢麻痺を来たす神経・筋疾患の中で、現在最も頻度が高く人口10万人当たり年間1〜2例の発症があります。日本全体では、毎年2,000人前後の患者が発生している計算になります。約7割の症例で、麻痺が発現する1週間から3週間ほど前に、何らかの先行感染症状があります。その約6割が呼吸器症状、3割が下痢などの消化器症状です。問診の段階で、この先行感染症状を上手に聞きだすことが、診断のためにとても重要です。

ギラン・バレー症候群の初発症状
    (%)
筋力低下+しびれ   26
筋力低下+痛み   14
筋力低下+しびれ+痛み   12
筋力低下のみ   12
   
筋力低下のパターン  
  下肢>上肢   54
  上肢>下肢   14
  上肢≒下肢   32
西本ら.日本臨床2001;59(8):529-539より改変。

 神経症状は、四肢の筋力低下やしびれ、痛みで発症し、急性に進行します。筋力低下のパターンは、ほぼ半数で下肢から始まり上行しますが、上肢から始まり下行性に進展する例も1割程度あります。発症当初は筋力低下に多少の左右差が見られても、経過とともにほぼ左右対称性の麻痺へ進展します。深部腱反射は、6割程度で発症初期にすべて消失しています。しかし、中には最後まで腱反射が保たれたり、逆に亢進する場合もあるため、注意を要します。3割の患者が症状のピーク時に、嚥下障害や呼吸筋麻痺により呼吸不全を呈するため、注意深く呼吸機能を観察しなくてはなりません。

ギラン・バレー症候群の徴候と症状の頻度
    初期(%) ピーク時(%)
筋力低下
上 肢   20 90
下 肢 60 95
顔 面   35 60
口咽頭 25 50
腱反射減弱・消失   75 90
眼筋麻痺 5 15
運動失調   10 15
痛み 25 30
しびれ   70 85
感覚消失 40 75
呼吸不全   10 30
西本ら.日本臨床2001;59(8):529-539より改変。

 そのほか、約半数の患者で顔面麻痺や咽頭麻痺を呈し、また2割程度に眼筋麻痺を伴います。教科書的には運動神経主体といわれますが、感覚障害を伴う例は8割近くにのぼります。さらに、3割の患者では強い痛みを訴え、対症療法としての疼痛管理も重要です。また、GBSには様々な亜型が知られています。そのなかで、代表的なフィッシャー症候群は、急性の外眼筋麻痺、小脳性運動失調、深部腱反射消失を主な症状とします。そのほか、咽頭・頚部・上肢の筋力低下を主体とするもの、両側顔面麻痺を主体とするもの、両下肢の麻痺のみを呈するものなど、その症状はきわめて多彩です。多くは2週間以内にピークに達し、その後徐々に回復します。再発はほとんどなく、本邦では4%程度と推測されています。
 最近の私達の調査では、GBSの患者が最初に受診する施設は神経内科以外の内科が37%と最も多く、そのうち一般の診療所は14%でした。整形外科を初診した患者も17%ありました。フィッシャー症候群では、25%が最初に眼科を受診しました。一方、初診時に正しい診断がなされていたのはGBSでは42%、フィッシャー症候群では30%にとどまりました。GBSは代表的な神経内科救急疾患であり、発症後1週間以内に適切な治療を開始することが大切です。神経内科医だけでなく、一般内科や整形外科、眼科など、そのほかの診療科の医師もGBSやその関連疾患について正しい知識を持ち、その可能性を念頭に置いて診療にあたることが重要です。


提供 : 株式会社スズケン


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