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<スズケンDIアワー> 平成15年5月22日放送内容より スズケン

ポリ塩化ビニル製医療用具の使用について


医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構 顧問
中島 新一郎

内分泌攪乱物質の現状

 昨今、新聞・テレビなどで話題となっている内分泌攪乱物質は、生物の内分泌機能に影響を及ぼす化学物質であり、その構造中が女性ホルモンのエストロゲンに似ているため、ヒトの内分泌系を妨害し、健康に悪影響を与える可能性があると考えられています。しかし、急性毒性がないため影響が判りにくく、生物濃縮、母胎を介した次世代への影響などに関して不明な点が多いのが現状です。
 われわれの身近にあるものに着目しますと、ポリ塩化ビニル(PVC)製の玩具、学校給食や弁当の調理時に使用される手袋などから、内分泌攪乱物質の疑いがあるとされているフタル酸エステル類、特にジエチルへキシルフタレート(DEHP)が溶出することが知られています。
 DEHPはPVC分子間に入り込んで樹脂に柔軟性を与えるプラスチック添加剤であり、PVCのほか、ポリ塩化ビニリデン、セルロースエステル、ゴムなどに、多いものでは40%程度添加されています。
 PVCはこれら玩具、給食用手袋などに限らず、現在医療現場で使用されている輸液バッグ、チューブなどにも汎用されており、可塑剤としてDEHPを30〜40%含有しています。PVC製の輸液バッグからDEHPが溶出することは早い時期から報告されています。本邦に於きましてもシクロスポリン、アルプロスタジル、タクロリムスなどをはじめ種々の医薬品を含有する輸液によりPVC製輸液チューブからDEHPが溶出することが報告されております。DEHPのヒトの健康に対する影響は現在のところ充分解明されたとは云えませんが、人体にとっては異物であることは事実であり、輸液を介した体内への流入は極力避けるべきであると思われます。
 今日はPVC製輸液チューブからのDEHPの溶出に関し、一連の研究から得られた知見を紹介するとともに、昨年10月に厚生労働省から発せられた「PVC製の医療用具から溶出する可塑剤について」の通達、およびそれに対する医療用具業界の対応についてお話ししたいと思います。

DEHPに関する知見

これまで得られている知見によりますと、

 1. 現時点でDEHPに起因するとされる健康被害が国内外において報告されておらず、米国・欧州においても使用禁止されていないこと。
 2. PVC製の医療用具を用いた医療行為の多くが切迫した生命の危機を回避するために使用される措置であることに鑑み、患者にとって考えられる危険性がPVC製医療用具を使用することによる利便性を上回るものであるとは考えられない。
 3. 一般に治療終了に伴い医療用具も使用されなくなることが多いこと。
 4. 使用方法によっては全くDEHPが溶出しない場合があることが知られている。

以上のことから直ちに使用を中止することを要しないと考えられています。
  しかし、その一方でヒトでは報告されていないものの齧歯類での精巣毒性および生殖発生毒性が確認されていることから我が国では不確実係数を100として耐容1日摂取量、つまり、ヒトが生涯にわたり摂取し続けても健康に対する有害な影響が現れないと判断される体重1kgあたりの1日当たり摂取量を40〜140μg/kg/日と設定していますが、臨床上の暴露量がこの数値を上回る事も考えられ、配慮が必要であると考えられます。


提供 : 株式会社スズケン


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