→ 番組表はこちら
→ ストリーミング版はこちら
<スズケンDIアワー> 平成15年5月22日放送内容より スズケン

ポリ塩化ビニル製医療用具の使用について


医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構 顧問
中島 新一郎

DEHP溶出についての通達と最近の知見

 只今お話しした項目に関連し、厚生労働省は日本製薬団体連合会、米国研究製薬工業協会、欧州製薬団体連合会に対して「PVC製の医療用具を用いて使用される脂溶性の高い医薬品について」の通達を行っています。これはPVC製の医療用具を脂溶性の高い医薬品とともに用いるとDEHPの溶出が引き起こされることから、1.PVC製の輸液セット、フィーディングチューブなどの医療用具を用いて使用される脂溶性の高い医薬品において使用中にDEHPがどの程度溶出するかについて統一した試験方法を具体的に示し、各社において自主点検を実施し、その試験成績を評価、検討し、必要に応じて使用上の注意に記載するなどの適切な措置を講じることとしています。

(資料1:「DEHPの溶出が報告されている注射剤」)

 最近の研究でPVC製医療用具からのDEHPの溶出には難水溶性医薬品の溶解性向上に用いられるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベートなどの界面活性剤が関与していることが明らかになっております。また、仮にこれらの界面活性剤が使用されていてもブドウ糖やシクロデキストリン等を添加することによりDEHPの溶出を抑制できることが明らかになってきました。
 現在は医薬品の溶解性・安定性向上とDEHPの溶出抑制効果を併せ持つ添加剤に関する検討が開始され、その成果が期待されます。

メーカーの対応〜DEHPを含有しない医療用具の開発

 ところで、今回の通達は製薬業界だけではなく医療機器関係団体協議会、日本医療器材工業会など医療用具メーカーに対しても行われました。これを受け、スチレン系エラストマー、ポリエチレン、ポリオレフィンなど、DEHPを含有しない高分子を構成成分とする医療用具の開発が行われ、一部市販されています。しかし、費用がPVC製品よりも2〜3倍と割高なこともあり、医療現場に充分浸透していないのが現状です。さらに、最近ではDEHPの代わりにDEHPよりも分子量が大きいトリメリット酸(トリ2-エチルへキシル)を使用した輸液チューブも開発されています。これは先に挙げた非PVC製のチューブと比較しても柔軟性に優れること、また溶出性もDEHPの約10分の1であること、さらに価格面も従来のPVC製製品とほぼ同等であることから使用頻度も高くなると予想されます。ただ、今回は詳細に申し上げませんでしたがPVC製輸液チューブには輸液中に混合した医薬品が輸液チューブ内部に収着した結果、薬品含有量が低下するという、薬物治療上見逃すことの出来ない現象も報告されており、トリメリット酸(トリ2-エチルへキシル)を使用した輸液チューブにおいても検討が必要であると考えられます。

  以上述べて参りましたように私たちの身の回りは勿論のこと、医療用具においてもPVC製品が汎用されており、可塑剤として使用されているDEHPの溶出に対して様々な策が講じられております。薬物治療が十分満足に行われるためには薬理学的見地だけではなく、医薬品・医療用具の物理化学的性質まで視野に入れた検討が今後益々求められると思います。


提供 : 株式会社スズケン


前項へ 1 2 3