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<スズケンDIアワー> 平成15年5月29日放送内容より スズケン

重金属の血管毒性に関する細胞生物学的研究


北陸大学 薬学部 教授
鍜冶 利幸

今日は「重金属の血管毒性に関する細胞生物学的研究」と題しまして私どもの研究成果をお話ししたいと思います。

重金属毒性研究は今日的課題

 重金属の毒性と言えば、日本では多くの人がイタイイタイ病や水俣病といった公害を思い浮べることでしょう。これらの公害は私が日頃接している若者たちの間ではすでに歴史上の出来事として認識されているようです。実際、生命にすぐに直接関わるような汚染は日本ではすでになくなったといってよいでしょう。しかしながら、例えばカドミウムについていうと、私たちは米などの食品や喫煙を介して日常的にしかも生涯にわたってカドミウムを体の中に取り込んでいるのです。そのような背景があって、現在、低用量のカドミウムの人体に対する毒性が問題となってきています。近い将来、低用量カドミウムの健康リスク評価が、カドミウム汚染米の規制に関するリスク管理の面で大きな社会問題となる可能性すら指摘されています。

なぜ血管毒性なのか

 血管は人体を構成する組織の中で最も大きな組織で、面積にして900m2以上、長さにして10kmにも及ぶといわれています。いうまでもなく血管はあらゆる組織に存在するので、重金属が標的臓器で毒性を発現する場合、血管に対する毒性が常に問題になります。「あらゆる重金属毒性は血管傷害の二次的影響である」とする研究者もいるほどです。ところが、例えばカドミウムの毒性は腎臓や骨組織に、メチル水銀の毒性は中枢神経系にといったように、重金属の毒性の標的臓器が比較的はっきりしているので研究もそのような標的に集中し、血管組織のような全身に分布する組織はあまり研究対象にされてきませんでした。

なぜカドミウムと鉛なのか

 大学院で重金属毒性学を学んだ私は1990年代に入って再びこの分野の研究に従事することとなり、重金属の血管毒性に関する論文を検索してみました。その結果、それまでの研究にはふたつの特徴があることが分かりました。それは、第1に、血管毒性を示す重金属としてカドミウムと鉛に関する論文が特に多かったことです。第2にそれまでの研究はカドミウムと鉛が血管毒性を発現し得ることを示していましたが、それらは疫学的研究や動物実験による研究、あるいは動物から血管組織を取り出して実験した組織レベルでの研究であり、細胞レベルあるいは分子レベルでの研究はほとんどありませんでした。そこで、血管細胞の培養系を用いてカドミウムと鉛の血管毒性を調べることにしました。


提供 : 株式会社スズケン


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