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<スズケンDIアワー> 平成15年6月19日放送内容より スズケン

DI実例集(141)
ゲフィチニブのその後


東京医科大学八王子医療センター 薬剤部
奥山 清

ゲフィチニブの作用機序

 ゲフィチニブについては分子標的治療薬あるいは間質性肺炎というキーワードに焦点を当てて、有効性と副作用を冷静に見ておく必要があると思います。

(資料1「分子標的治療薬の分類」)

 分子標的薬は遺伝子研究の進歩に伴って、急速に実用化されました。細胞はあらゆる受容体を発現する能力を持っていますが、通常は遺伝子の働きによって適切な受容体が適量発現するようにコントロールされています。悪性腫瘍では、ある種の受容体が過剰に発現していて、これが予後不良因子になることが知られています。過剰発現した受容体を標的にして、その細胞を障害しようとするのが分子標的薬と言えます。受容体に特異的なモノクローナル抗体、あるいは受容体伝達物質の阻害薬などが、難治性乳癌の治療薬、白血病治療薬、肺癌治療薬、また移植における免疫抑制薬として臨床で使用されています。過剰発現した受容体が標的となるため、奏功率が高く、副作用が軽減できるというメリットがあります。
 ゲフィチニブの標的となるのは、上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor:略してEGFR)と言います。EGFRは細胞の増殖、血管新生、浸潤、転移などに重要な役割を果たしており、ゲフィチニブはこの受容体の伝達因子であるチロシンキナーゼという酵素を阻害することによって、癌細胞の増殖を抑えると言われています。ただ、臨床成績では、EGFRの発現が多い扁平上皮癌よりも腺癌への奏功率が高い結果が得られており、この経路以外にも何らかの作用機序が存在すると言われています。

(資料3「EGFRが過剰発現している癌種」)

 ゲフィチニブは安全性試験の後、第II相の臨床試験として、プラチナ製剤などによる化学療法を経験した進行性非小細胞肺癌の患者210例に対して単独投与試験が行われました。この結果、CR、PR、SDを合わせた病勢コントロール率が50%を超え、自覚症状の改善率が40%前後、症状改善までの期間中央値が8日というデータが出ました。肺癌の5年生存率が13%前後であることを考えると、この数字は驚異的な奏功率で、期待できる薬剤として注目されたのは当然と言えます。


提供 : 株式会社スズケン


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