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<スズケンDIアワー> 平成15年6月26日放送内容より スズケン

SARSその対応と対策


国立感染症研究所 感染症情報センター センター長
岡部 信彦

SARS感染の経緯

 本日は重症急性呼吸器症候群 Sever Acute Respiratory Syndrome:SARSのお話を申し上げます。原因不明の急性肺炎の発生として世界中の問題となっているSARSですが、その原因がcorona virusというウイルスの一種であることがわかり、急速にその様子が明らかになりつつあります。しかしまだ不明な部分も多く、すべてのエビデンスを持ってご説明できる段階ではなく、また毎日のように新たな知見が積み重ねられるところから流動的な部分も多く、本日お話し申し上げますことは収録日現在で分かっていること、コンセンサスの得られていること、としてお聞きください。
 SARSは今年(2003年)2月頃から、ハノイあるいは香港において重症の非定型性肺炎患者が入院したことをきっかけに医療スタッフに肺炎が拡がり、院内感染呼吸器疾患として問題になり始めました。当初はトリ型インフルエンザH5N1がその原因として疑われ、新型インフルエンザの登場かと危惧されましたが、H5N1やその他の既知の病原体は次々と否定されました。ハノイでは一ケ所の病院での流行でしたが、香港では複数の病院で流行が起こり、さらにあるアパート群で多数の患者さんが発生したことから、院内感染にとどまらず、社会へ拡がったとして注意が喚起されました。加えてカナダ、シンガポール、ドイツなどでも香港からの旅行者に同様の原因不明の肺炎患者が発生し、WHOは世界共通で注意すべきものGlobal alertとしました。
 このような時に「何時、何処で、どのくらい」の患者発生があり、どのような拡がり方をしているかなどの疫学調査が必要となりますが、原因不明の疾患について、確定診断を待っているのでは対策が間に合わなくなります。そこで、このような時は一定の症状を持ったものを広く集める「症候群サーベイランス」という調査を行います。今回、発熱、咳、呼吸困難と発生地域への旅行やSARS患者との接触のある場合をSARS疑いのきっかけとし、これにレントゲンで肺炎が確認されたものをその可能性が高いものとして取り扱うことを世界共通の届出のための基準としています。この中から他の症状で説明できるものは除外されることになります。さらに最近では疑い例として考えられたものについてSARSコロナウイルスの検査を行い、陽性となった場合には可能性例と考える、とされました。
 当初不明であった病原は動物実験などによりコロナウイルスと確認されました。これまでにコロナウイルスは人の鼻かぜやいくつかの動物コロナウイルスとしてよく知られていますが、肺炎患者から分離されたコロナウイルスの遺伝子構造はこれまでに知られているコロナウイルスとは異なるものであり、WHOはこれを新種のウイルスとしてSARS corona virus と呼びました。最近ハクビシンなどの野生動物から同様のウイルスが検出されたとの報告がありますが、これらがヒトへの感染源になったかどうかについての確定はされていません。


提供 : 株式会社スズケン


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