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<スズケンDIアワー> 平成15年7月3日放送内容より スズケン

乳がん治療薬
カペシタビン


埼玉医科大学 臨床腫瘍科 教授
佐々木 康綱

乳癌の薬物療法

 近年、わが国でも乳癌の罹患者数および乳癌による死亡者数は急速に増加している。1980年と比較して1998年には、2倍以上の9,171名の死亡者数が報告されている。この状況に対して乳癌薬物療法の進歩も著しく、Docetaxel,PaclitaxelなどのTaxan系抗癌剤、HER2に対するモノクローナル抗体治療薬であるTrastzumab等新規薬剤の導入により治療成績は確実に向上している。しかしながら、特に転移・再発乳癌症例では完治は困難であり、またAnthracycline系薬剤、Taxan系薬剤といった標準的化学療法が奏効しなかった場合には、用いるべき有効な薬剤が存在しなかった。

カペシタビンの特徴

 本日は、このほど手術不能もしくは再発乳癌に対する新規抗癌薬として発売された第四世代の経口フッ化ピリミジン製薬であるカペシタビンについて解説する。カペシタビンは、投与後、生体内で活性化され抗腫瘍効果を発揮するいわゆるMasked Compound製剤である。

(図:「カペシタビンから5-FUへの変換経路」)

 経口内服後、カペシタビンは肝に存在するカルボキシルエステラーゼ、シチジンデアミナーゼによりそれぞれ5’DRCR、5’DFURへと変換される。更に5’DFURは、がん細胞内に特異的に高く存在するサイミジン・フオスフオリラーゼによって活性代謝産物である5-Fluorouracil(5-FU)へと変換され、がん細胞内に高濃度の5-FUが特異的に存在することになる。
 ちなみにカペシタビンの中間代謝産物である5’DFURは、現在、わが国で販売されている同類の経口フッ化ピリミジン製剤であるドキシフルリジン(フルツロン®)と同一物質である。すなわち本薬はフルツロン®に更に修飾を加えることにより、薬物有害反応(以下副作用)である下痢を少なくするとともに、腫瘍内での5-FU濃度を特異的に高めることを目的としてデザインされた新規抗癌薬である。われわれの検討によれば、カペシタビンを投与された患者血漿中のフルツロン濃度はフルツロン®そのものとして授与された場合の血漿内濃度よりも高く、またその持続時間も長いことが示されている。


提供 : 株式会社スズケン


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