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<スズケンDIアワー> 平成15年7月17日放送内容より スズケン

第51回日本化学療法学会総会より
感染症治療のための抗菌薬療法のサイエンス


慶應義塾大学 薬剤部 教授
谷川原 祐介

投与量設定のためのPK/PD

 次の演者は、明治製菓株式会社の相澤一雅氏。演題は「投与量設定のためのPK/PD」で、製薬企業の抗菌薬開発におけるPK/PDの活用について講演されました。
 従来の抗菌薬の用法・用量は、非臨床におけるin vitro および in vivo 有効性のデータを参考とはしていますが、実際には既存類薬と類似の用法用量に設定している場合が多く、科学的エビデンスに乏しいと考えられます。
 そこで、臨床における用法・用量の設定に関して、今後は次のような新薬開発の進め方が推奨されます。まず、非臨床データと、Phase IでのヒトのPKデータを合わせ、臨床での有効性を推定します。そしてPhase IIでは、患者におけるPK/PD解析を行い、用法・用量設定の妥当性を検証するという方法です。
 動物を用いたin vivoのPK/PD試験に際しては、Craigの提唱するPK/PD手法があります。好中球減少マウス大腿感染モデルに、抗菌薬の投与量・投与間隔・投与回数を、さまざまに設定して実験的治療を施した後に解剖し、大腿部の生菌数をカウントして有効性と相関するPKパラメータを明らかにします。そして、これに基づいて、臨床試験をPK/PDに基づいて計画します。
 このように、PK/PDを応用すれば、科学的なエビデンスに基づいた臨床での用法・用量の設定ができるばかりでなく、さらに臨床開発の期間短縮、被験者数の低減、費用低減にもつながり、今後は抗菌薬開発の中心的な役割を果たすと考えられます。

PK/PDに基づいた薬剤耐性菌の克服

 3人目の演者は、東北大学大学院・病態制御学教室の賀来満夫教授で、演題は「PK/PDに基づいた薬剤耐性菌の克服」です。
 薬剤耐性の克服を考える上で、薬剤耐性の伝播防止、確実な治療、増加防止の3つのポイントを確実におさえていく必要があります。このうち確実な治療と耐性菌の増加防止に重要な役割を果たすのが、PK/PDを根拠とした抗菌薬の選択、使用法、そして使用量のコントロールであると言えます。
 患者におけるPK/PD研究を行うにあたり重要な点は、正確な起炎菌の検出・同定、低濃度まで正確にMICを測定すること、および治験や市販後調査における血中濃度測定を行うことです。臨床効果を反映するPKパラメータとしては、β-ラクタム系やマクロライドではTime above MICが、またアミノグリコシドではピーク濃度が、ニューキノロンはAUC/MICが重要となるという知見が得られております。これにより、異なる投与条件で臨床効果が異なることがPK/PDから推定できます。例えば、ニューキノロン薬では、一日投与量が同じならAUC/MICは同じですが、分割投与して一回の投与量が少ないとCmax/MIC値が低くなり耐性菌を選択してしまうという問題を生ずるため、投与量のみならず投与設計も重要であります。
 現在、耐性菌の治療に際し選択できる抗菌薬は限られているため、効果的な投与法はどうすればよいのか、また耐性菌を出現させない投与法はどうすればよいのかという命題に対して、PK/PDから回答を見いだせる可能性があり、耐性菌問題を克服する上でPK/PDは重要な理論と言えます。


提供 : 株式会社スズケン


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