 喘息治療における長時間作用型吸入β2刺激薬
関西医科大学洛西ニュータウン病院 薬剤部 主任
山下 博民
喘息治療の基本治療薬
本日は、喘息治療における長時間作用型吸入β2刺激薬について紹介させていただきます。まず、気管支喘息は従来、気管支平滑筋の攣縮による可逆性の気道閉塞と、種々の刺激に対する気道過敏性の亢進が基本病態であるとされていました。しかし、最近では喘息の本態は気道の主として好酸球、次いでT細胞、肥満細胞の浸潤を伴う炎症であり、気道上皮粘膜の損傷がみられる結果として、気道の過敏性や可逆性の気道閉塞が起こるとされ、また気道炎症の長期化により気道の構造改変(リモデリング)が起こってくると考えられています。したがって、その治療も炎症を抑制する吸入ステロイド薬が慢性期の長期管理の基本治療薬となっています。

2002年に米国、心・肺・血液研究所より発布された「喘息管理・予防のグローバルストラテジー」(GINA)のなかで、長期管理薬には吸入ステロイド薬以外にテオフィリン徐放性製剤、抗ロイコトリエン薬、経口ステロイド薬などがあり、これに加えて長時間作用型吸入β2刺激薬が長期管理薬として位置づけられています。これに対して、短時間作用型吸入β2刺激薬は急性期のみの使用とされています。その理由として、頻回あるいは定期的に用いても喘息症状やピークフローの変化、あるいは気道過敏性がコントロールできないことが明らかにされ、短時間作用型吸入β2刺激薬の一つのフェノテロールにいたっては、定期的な使用で喘息コントロールが悪化するという報告もみられました。これらのことから長期管理薬として短時間作用型吸入β2刺激薬を使用することは適当でないとされています。
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