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<スズケンDIアワー> 平成15年8月28日放送内容より スズケン

病態シリーズ(22)
好酸球増多症


三楽病院 第一内科 部長
吉川 雄二

好酸球の増多をきたす疾患

 次に好酸球増多をきたす疾患について述べます。

(資料2a:「好酸球増多をきたす疾患」(1))

 まず寄生虫疾患ですが 旋毛虫症、条虫症、アニサキス症、肺吸虫症、日本住血吸虫症など種々の寄生虫疾患に伴って好酸球増多が見られます。増多の程度は様々ですが、高度の増多を認めることもしばしばあります。特に著明な好酸球増多の患者さんを診た場合には、寄生虫疾患を疑い、生活歴をふくめた注意深い病歴聴取が必要です。さらに虫卵検査などをおこない、疑いが強い場合には寄生虫特異抗体測定で確定診断をする必要があります。
 好酸球増多をきたす疾患の2番目にはアレルギー疾患が挙げられます。この中には気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、血管浮種などの疾患があります。これらアレルギー疾患では好酸球の増多は通常軽度にとどまることが多く、病歴や各疾患に特徴的な身体所見から比較的容易に診断が可能と思われます。また抗生物質など種々の薬剤アレルギーが好酸球増多の原因になっていることもあり、薬剤服用歴の聴取は好酸球増多症の鑑別診断上、重要と考えられます。呼吸器疾患では気管支喘息以外にも、好酸球肺浸潤症候群(PIE症候群)がよく知られています。これは好酸球の増加に伴い胸部X線で肺に浸潤影が見られる疾患の総称で、好酸球性肺炎とも呼ばれています。また、アジソン病などの内分泌疾患で好酸球増多をみることもあります。

(資料2b:「好酸球増多をきたす疾患」(2))

 次に消化器疾患ですが、まず好酸球性胃腸炎が挙げられます。これは好酸球の胃腸粘膜の浸潤により蛋白漏出性胃腸症をきたし、下痢や腹水などの症状を呈する疾患です。他の消化器疾患では、潰瘍性大腸炎やクローン病などのいわゆる炎症性腸疾患で好酸球増多が見られることがあります。さらに、多発性動脈炎(PN)やアレルギー性肉芽腫性血管炎すなわちシャーグ・ストラウス症候群(CSS)などの血管炎や、白血病、悪性リンパ腫、種々の固形癌も好酸球増多症の基礎疾患として挙げられます。
 CSSは1951年ChurgとStrausにより提唱されたPNとは独立した血管炎を伴う症候群です。特徴としては、

  1. 喘息発作が先行する。
  2. 通常800個/μL以上の好酸球増多を認める。
  3. のちに血管炎に伴う症状が出現する。
以上3点がCSSの特徴です。三番目に挙げました血管炎に伴う臓器障害には、例えば、末梢神経炎や紫斑、消化性潰瘍、心筋虚血や心外膜炎などがあります。CSSは30歳から60歳の人に多く男女差はないとされています。検査所見では好酸球増多以外に、血小板増多や血沈亢進、IgE高値、リウマチ因子陽性、抗好中球細胞質抗体(ANCA)陽性などが参考所見とされています。治療は主に副腎皮質ホルモンが使用されます。

好酸球増多症候群(HES)の診断基準

 また、既に述べたような基礎疾患がなく著明な好酸球増多を伴い、種々の臓器障害をきたす病態があります。好酸球増多症候群(HES)がそれです。1968年にHardyとAndersonにより定義された診断基準は以下の通りです。

  1. 1500個/μL以上の好酸球増多が6ヶ月以上続くか、またはそれ以前に患者が死亡する。
  2. 寄生虫症やアレルギー疾患など、他の好酸球増多をきたす疾患が除外できる。
  3. 好酸球浸潤による臓器障害がある。
以上の3点です。理由はわかりませんが、9対1で男性に多い疾患です。HESの臨床症状は障害臓器により様々ですが、食欲不振や体重減少、微熱などの非特異的な症状で発症することが多いようです。心臓の症状としては刺激伝導系の障害やうっ血性心不全、呼吸器症状では肺炎や胸水、神経症状では意識障害や末梢神経炎、消化器症状では肝脾腫や下痢などが認められます。皮膚に紅斑を認めることもあります。好酸球は中等度からしばしば高度の上昇がみられます。臓器障害が明らかな場合には積極的な治療が必要で、通常副腎皮質ホルモンが使用されます。60mgで治療を開始し、好酸球数の減少を確認しながら減量をします。ステロイド抵抗性の症例にはHydroxyureaやインターフェロンなども使用されることもあります。特殊な治療としてはリンパ球除去や骨髄移植がおこなわれることもあります。ステロイド薬に反応する場合には一般的に予後良好ですが、心不全や中枢神経症状がある時は不幸な転帰をとることもしばしばあります。


提供 : 株式会社スズケン


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