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<スズケンDIアワー> 平成15年12月25日放送内容より スズケン

ケトライド系経口抗菌剤
テリスロマイシン


北里大学 微生物・寄生虫学 教授
井上 松久

テリスロマイシンの抗菌作用

 次に臨床分離菌に対するテリスロマイシンの抗菌力について紹介します。市中感染菌として分離された肺炎球菌に対するCAMやAZMのMIC50は、既に32〜64μg/mLと高かったのに対して、テリスロマイシンのMIC50は0.06μg/mL、MIC90は0.5μg/mLでした。マクロライド耐性遺伝子ermBを保有する耐性肺炎球菌を集め調べてみますと、CAM、AZMはMIC90が>128μg/mL、テリスロマイシンのMIC50は0.03μg/mL、MIC90は0.5μg/mLであり、リボソームに対する結合親和性の特徴を反映してテリスロマイシンは良好なMICを示しました。なお、この段階ではマクロライド耐性菌の中からテリスロマイシン耐性菌は検出されていません。薬剤の排出に関与する耐性遺伝子mefAを保有するCAMやAZM耐性肺炎球菌に対するテリスロマイシンのMIC90は、0.125μg/mLでした。その他、テリスロマイシンは臨床分離のキノロン耐性肺炎球菌に対しても良好なMICを示し、キノロン系薬とは交叉耐性は認められませんでした。

(資料3:「H.influenza(227株)」)

 その他、テリスロマイシンは呼吸器感染の主要な原因菌となっているBLNARを含めたインフルエンザ菌やモラクセラ・カタラーリスに対しても強い抗菌力を発揮します。インフルエンザ菌に対するMIC90は2μg/mLと若干高い傾向でした。しかし、テリスロマイシンの食細胞内への移行性が血中濃度の数十倍以上と高いために、インフルエンザ菌に対しても本剤は治療効果が十分期待されます。その他、口腔外科領域の主要な細菌であるストレプトコッカス属やプレボテラ属、あるいは非定型病原菌である肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミジア、レジオネラ属等に対しても強い抗菌力を示します。

より有効な投与のために

 このように、テリスロマイシンは23S rRNAにとって重要な2つの領域に強く結合するため、マクロライド耐性に関与するerm遺伝子産物であるアデニン・ジメチラーゼの誘導能がありません。われわれが調べた限りでは、臨床分離の肺炎球菌のマクロライド耐性は全株誘導型の耐性であることが判っています。このことが、現在問題になっているペニシリン・セファロスポリンおよびマクロライド耐性肺炎球菌に対してテリスロマイシンが強い抗菌力と殺菌力を発揮する理由と考えます。また、テリスロマイシンの食細胞内への移行性も高いことから、インフルエンザ菌をはじめとする市中感染で問題となっている呼吸器感染症の各菌種や耳鼻科領域での感染症の原因菌に対しても十分カバーするものと期待されます。
 とは言っても、細菌学的な立場から抗菌薬の使用と耐性菌の出現の歴史を考えますと、テリスロマイシンが耐性菌を全く選択しないことは確約はできません。この優れた抗菌薬を長持ちさせるためにも、使用量や使用期間など適正使用をお願い申し上げ、私の話を終わりにします。


提供 : 株式会社スズケン


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