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<スズケンDIアワー> 平成16年1月8日放送内容より スズケン

24時間持続型インスリンアナログ製剤
インスリングラルギン


順天堂大学内科 教授
河盛 隆造

インスリン製剤の歴史

 新たに登場したインスリンアナログ、グラルギンは1日1回注射でほぼ24時間にわたり安定したインスリン作用を示すことから、新たな基礎インスリン補充製剤として期待されており、2003年12月に本邦においても、上市されました。ここでは、インスリン製剤の進歩を振り返るとともに、インスリングラルギンの基礎および臨床データを紹介し、特に2型糖尿病のインスリン治療におけるグラルギンの使用法を考えてみたいと存じます。
 1921年、カナダ・トロント大学のBantingとBestは膵臓よりインスリンの抽出に成功し、翌年には多くの1型糖尿病の子供たちにインスリン治療が開始されました。インスリンの発見後、製剤の純化と改良は、現在に至るまで80年余にわたり続けられております。発見当時のインスリン製剤は、現在の速効型インスリンに相当するものであり、1日3〜6回の注射が必要でした。注射機器も現在とは異なり、注射に伴う苦痛も大きかったことから、患者の負担を軽減するためにも持続時間を長く、投与回数を少なくできる製剤が求められておりました。1936年にはプロタミンインスリンが作られ、さらに1946年にはプロタミンインスリンに亜鉛を加えると安定した結晶が得られることが発見され、持続的な作用を示す製剤が開発されました。現在、中間型インスリンの代表的な製剤としてNPHインスリンがあります。
 1970年代までインスリン製剤はブタもしくはウシの膵臓から抽出した動物インスリンを精製しておりました。1980年代には遺伝子組換え技術を用いたヒトインスリンの生合成が行われ、製品化されてまいりました。ヒトインスリンの利点は(1)抗原性が動物インスリンに比べて低いため、それに起因した副作用が少ないこと、(2)中性のpH溶液で溶解度が大きいため、製剤が安定化し、室温での保存期間の延長が可能になったこと、が挙げられます。最近ではより生理的なインスリン分泌動態の再現を目指して、インスリンのアミノ酸を修飾したインスリンアナログ製剤の開発が行われており、超速効型インスリンアナログが2年前より本邦において広く臨床応用されているのはご存知の通りでございます。

インスリン分泌と糖尿病

 健常人のインスリン分泌は基礎分泌と追加分泌から構成されると捉えれば理解しやすいと思います。インスリン追加分泌は食事摂取後、血糖値の上昇に対応し、素早く分泌され、刺激後1時間以内にピークが発現し、ほぼ3時間後に基礎値に回復するパターンをとります。
 一方、インスリン基礎分泌は24時間ほぼ一定した血中インスリン濃度を維持します。一般的に1型糖尿病では基礎および追加分泌のいずれも完全に障害されていると考えられます。しかし、2型糖尿病では主として追加分泌の障害、特にその分泌反応が遅れるというのが特徴でございますが、2型糖尿病でも進行するにつれて基礎分泌も低下し空腹時血糖値が上昇してまいります。

インスリン製剤の分類

 インスリン製剤は皮下注射後の作用発現時間により、超速効型インスリンアナログ、速効型、中間型、持続型および持効型溶解インスリンアナログに分けることができます。この他に速効型インスリンと中間型インスリンを混合した混合型もございます。
 インスリン製剤は皮下注射後、皮下で二量体、単量体に解離してから毛細血管内に吸収され、単量体となって各臓器で作用を発現します。すなわちインスリン作用のプロファイルは、皮下から血管内へのインスリンの移行動態により決定されます。なお、血中でのインスリンの半減期は10分以内であり、血中に移行後は速やかに代謝されることが知られています。


提供 : 株式会社スズケン


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