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<スズケンDIアワー> 平成16年3月25日放送内容より スズケン

病態シリーズ(24)
多臓器不全


獨協医科大学越谷病院麻酔科 教授
奥田 泰久

icon多臓器不全の病態

 本日は、最近有名人などの死亡原因としても報告され、耳にすることが多くなった多臓器不全(MOF)についてお話しをさせていただきます。
 多臓器不全とは、生体が様々な過大な侵襲を受けた後に中枢神経、心臓、肺、肝臓、腎臓、消化管、凝固系、免疫系、代謝系などの生命を維持するために必要な複数の重要臓器や系が関連性をもって同時または短期間に、連続的に機能不全に陥った病態であります。
 現代医学においては、単独の臓器機能不全に対しては、ある程度対応できるようになってきたのですが、複数同時の臓器機能不全に対しては、まだまだ対応が十分ではありません。多臓器不全が一旦発生すると極めて難治性で致死的な状況になるにもかかわらず、いまだその病態および治療に関して未解決な部分が多く、最終的には「ある程度の時間を経過して死亡するあらゆる人間が陥る末期臨床状態」とも表現されることもあるもので、以前から多くの医療関係者が重要な関心を払っているものであります。
 死亡した症例を解剖してみますと、死亡前の検査値と実際の臓器障害の程度が異なっていることが多くあります。死亡直前の各臓器に関連した検査では重度の臓器障害を示唆する異常値が認められたにもかかわらず、解剖された臓器においては細胞の広範な壊死(損傷)などが認められることはむしろ少ないのです。このことにより、明らかな臓器自体の病変により機能不全に陥ったものではなく、侵襲が生体へ及ぼした何らかの悪影響に対して、各臓器を構成する細胞が自分自身を守るためにその活動を停止して、臓器機能が低下することが推測されています。もともとは1970年代に腹部大動脈瘤手術後の18例において基礎疾患とは直接関係がない複数の重要臓器が次々とドミノ倒しの様に機能不全を起こし、そのうち17例が死亡したことが報告されたことに端を発して、個々の臓器が別個に障害されたものではなく、関連性をもって一連の臓器や系がそれぞれ正常な機能をしなくなり全体として致死的状態になる病態を一つの疾患単位として扱うことが指摘され、これを多臓器不全と呼ぶようになったのです。しかし長い間、多臓器不全やその前段階の敗血症やショックなどの用語の定義が明確に統一されず、混乱もあったので、最近は複合臓器不全症候群(MODS)として直接的に多臓器に障害を与える一次性、後述するSIRSの持続により多臓器に障害を与える二次性(従来の多臓器不全)に分類することが提唱されています。


提供 : 株式会社スズケン


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