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<スズケンDIアワー> 平成16年3月25日放送内容より スズケン

病態シリーズ(24)
多臓器不全


獨協医科大学越谷病院麻酔科 教授
奥田 泰久

icon多臓器不全の原因

 多臓器不全の原因となる侵襲とは重症感染症、外傷、大手術、ショック、膵炎、大量出血、播種性血管内凝固症候群(DIC)、心不全、低血圧、低酸素血症、悪性腫瘍などがありますが、頻度的には重症感染症が圧倒的に多いとされています。それらの原因が引き金となり生じるわけですが、とりわけ次の大きな二つの因子が機序として考えられています。一つは数々の原因、例えばショック・低血圧などによる末梢循環不全による組織血流の低下が原因である組織内低酸素血症。もう一つは感染症をはじめとする数々の炎症に対する生体防御反応である代償機転や修復機転、つまり本来は生体を炎症から防御するために体内で産生されるサイトカインやホルモンを中心とした各種化学伝達物質が、生体への侵襲が大きい場合、過剰放出されることによって、単球や好中球および血管内皮細胞が強力に活性化され、活性化好中球が血管内皮細胞を障害して制御不可能な全身性の炎症反応を引き起こし、逆に各臓器に悪影響を与えるためとされています。そしてこれらの因子が単独ではなく、さらに様々な病態を相互に巻き込んで複雑にからみあっていることが推測されています。

icon多臓器不全の診断と重症度評価基準

 臨床症状としては、通常、肺は多臓器障害の中で最も早期に高頻度に機能不全が認められる臓器であり、多くは肺水腫を伴った低酸素血症を認めます。次に肝不全となり血清酵素が上昇し、肝性脳症まで呈することがあります。それから消化器障害としては腸閉塞、消化管出血、腎障害では腎不全となり腎濃縮能や腎排泄能が障害され、血液系ではDICなどが発生します。骨髄抑制による貧血や心循環障害による不整脈、心収縮力低下、低血圧らの症状の多くは病期の後半に出現します。そして中枢神経障害として精神・神経障害、意識レベルの低下などは病期の全体を通して出現します。さらに代謝系障害によりインスリンを投与しても制御困難な高血糖、それとは逆の非常に予後の悪い低血糖などがしばしば認められます。

(資料SL-7:「多臓器不全の診断」)

 診断基準や重症度評価基準はこれまでにいくつか示されており、臨床所見をスコアリングしたMODSスコアやSOFAスコアなど、それなりの有用性は認められているものはありますが、いまだ統一されたものはなく、臨床的に簡便に、確実に使用できるものは少ないのが現状です。しかし基本的には重要臓器、例えば脳、肺、心臓、肝臓、腎臓らの中で二つ以上の臓器の機能不全を呈するもので、各臓器の障害程度を総合的に評価して多臓器不全を診断されています。

icon多臓器不全の治療

 治療に関して述べますと、前述のように各臓器自体の明らかな損傷ではなく、むしろ侵襲に反応して機能低下であることが多いので、その病期を集中治療で乗り越えれば理論的には各臓器は、回復して治癒することになりますが、これまでに試みられた多くの治療法では残念ながら死亡率を劇的に改善させるまでには至っておりません。

(資料SL-8:「多臓器不全の治療」)

 まず外科的処置や化学療法などによる原因となる感染巣や炎症のコントロールが新たな機能不全に陥る臓器を防ぐためにも根本的治療になるわけですが、個々の臓器の機能不全に対応した治療も施行されています。例えば呼吸不全であれば人工呼吸器や人工肺、腎不全であれば透析、肝不全に対しては血漿交換、心不全には循環作動薬や補助循環装置、高血糖や低栄養に対して中心静脈による適切な栄養補給、各種化学伝達物質に対しての血液浄化、薬物療法などのimmunomodulationが施行されていますが、一つの不全臓器に対する治療が他の臓器に対しては悪影響を及ぼすこともあるので、各不全臓器の相互関連性も考慮しながら細心の注意と観察力が治療には必要とされています。また高度で高額な医療、つまり多大な医療器械や薬物そして専門家が個々の症例の治療に投入されること、そこまでしてもなかなか良い結果を得られることが少ないことから、最近は治療に対する考え方や方法が施設によって異なることもあります。


提供 : 株式会社スズケン


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