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<スズケンDIアワー> 平成16年4月8日放送内容より スズケン

肝動注用シスプラチン


鹿児島大学病院 放射線部 助教授
井上 裕喜

icon動注用シスプラチンの特徴

 シスプラチンは、様々な臓器の癌に対して高い効果を示す抗腫瘍性白金錯体で、日本では点滴静注用の注射製剤が肺癌、胃癌などの13種類の癌に対して承認されています。

(資料3:「シスプラチンの構造式」)

 シスプラチンは肝細胞癌に対しても、効果が検討されてきた薬剤のひとつです。特に、動注療法により高い有効性を示すことが報告されてきましたが、これまで肝細胞癌に対する適応は世界的にもありませんでした。

(資料4:「シスプラチン製剤」)

 今回承認された動注用シスプラチンは、現在市販されている静注製剤とは異なり、肝細胞癌に対する動注用に新たに開発されたものです。従来の静注用シスプラチンは、シスプラチンをあらかじめ生理食塩水に溶解したものであるのに対して、今回承認された動注用シスプラチンは、シスプラチン粉末をバイアル充填した、用事溶解して用いるものであり、静注用シスプラチンに比べ、約3倍の濃度の薬液を投与することができます。従って、動注療法において腫瘍内の薬剤濃度を高めるとともに、より少ない容量で簡便に投与できるなどの利点が期待できます。

icon臨床試験成績

 本剤の開発では、肝細胞癌に対するシスプラチン単独での動注療法による有効性、安全性を明らかにするために、国内において計104例の切除不能の肝細胞癌患者を対象とした、臨床試験が実施されました。投与方法としては、血管造影法を用いて、シスプラチンを1日1回ゆっくりと肝動脈内に投与、4〜6週間の休薬で1コースとし、原則2コースが実施されました。また、シスプラチンの副作用として知られる腎毒性を軽減するために、動注の前後には静注による全身投与と同様に、輸液による水分負荷(Hydration)を行いました。
 用量設定のための第I・第II相試験は、1995年より開始されました。計24例の肝細胞癌患者を対象に、体表面積、25、50、65、80mg/m2の4つの用量での有効性、安全性及び血中濃度を検討いたしました。

(資料6:「腫瘍縮小効果」)

 その結果、50mg/m2以上の用量で、50%以上の腫瘍縮小が4週間以上継続する有効例が認められ、一部の患者では腫瘍の完全消失が得られました。80mg/m2では、好中球減少等の骨髄障害が高頻度に認められたため、本剤の肝動注に適した用量は65mg/m2と推定されました。なお、本試験でのシスプラチン動注時の末梢血中濃度は、投与量に依存して増加しましたが、それらはシスプラチン静注で報告されている血中濃度とほぼ同等と考えられました。
 この結果に基づいて、1999年より65mg/m2の用量で、後期第II相試験を実施しました。この試験では成績の再現性を確認するため、同じ内容の試験を2グループで実施しましたが、有効性、安全性ともに2グループで同様な結果が得られました。
 有効性については2グループともに30%以上の奏功率が得られ、2グループ合計80例での奏功率は33.8%でした。第I・第II相試験と後期第II相試験において、シスプラチン65mg/m2を投与された95例での奏功率は32.6%であり、肝癌に適応を有する他の抗癌剤と比較して、かなり良好な成績が得られました。


提供 : 株式会社スズケン


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