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<スズケンDIアワー> 平成16年4月15日放送内容より スズケン

ファブリー病治療薬
アガルシダーゼベータ


東京都臨床医学総合研究所 臨床遺伝学研究部門
桜庭 均

iconファブリー病の病態

 通常、典型的な臨床経過をとる古典型のファブリー病の男性では、少年期から青年期に、手足の痛みや汗をかかないなどの症状がみられます。そして、中年期になると蛋白尿が出現し、次第に腎障害が進行します。また、年齢が高くなると、心肥大、心弁膜障害や、不整脈などの心臓の症状や脳血管障害、心虚血、心筋梗塞などの血管系の症状が出てきます。

(資料4:「ファブリー病の病態」)

 一方、この様な典型的な臨床像を示す患者の他に、発症年齢が高く、緩やかな経過を示す患者群が存在し、亜型ファブリー病と呼ばれます。その中で、ほとんど心臓に限局した症状を示す一群を心臓型ファブリー病と呼んでいます。
 ファブリー病で見られる重要な所見として、角膜の混濁、それから皮膚のアンジオケラトーマがあります。

(資料6:「ファブリー病でみられる症状」)

 また、蛋白尿の原因を調べるために行われた腎臓の生検において、電子顕微鏡による病理検査で、たくさんの封入体の存在が認められることで診断がつく場合があります。
 心臓型ファブリー病では、40〜60歳頃に胸の痛み、動悸や呼吸障害を主訴に来院し、多くの場合、最初は肥大型心筋症が疑われます。そして、心内膜心筋生検が行われ、病理検査で封入体がみつかり、この病気の診断がなされた症例が多く存在します。
 ファブリー病の診断は、通常、末梢血液を試料として、その中の白血球などのα-ガラクトシダーゼの活性を測定することによって行われます。ファブリー病のヘミ接合体男性では、酵素活性が著しく低下しているため、この方法でほとんどが診断されます。最近、問題になっているのは、ファブリー病ヘテロ接合体の女性例です。これまで、ファブリー病ヘテロ接合体では、ほとんどの場合、角膜混濁が認められる程度で、あまり重い症状を示す人は少ないと言われてきました。しかし、最近、多くのヘテロ接合体の方たちについて調べてみますと、若いときに手足の痛みを経験したり、中には脳血管障害や腎障害を起こす人もおり、高年齢になると、かなりの方に心肥大の所見がみられる様です。こうしたファブリー病ヘテロ接合体では、その診断がなかなか難しい場合があります。ヘテロ接合体では、全体としての酵素活性の平均値は、ヘミ接合体群の値と正常対照群の値のほぼ中間の値をとります。

(資料11:「培養リンパ芽球中のα-ガラクトシダーゼ活性」)

 しかし、個々の症例についてみますと、著しく活性が低いものから正常域に入るものまで多様で、正常対照と区別できないことがあります。
 この理由として、X染色体の不活化が考えられます。女性の場合、細胞内に2本存在するX染色体のうち、母親の胎内でどちらか一方がランダムに不活化されます。このため疾患遺伝子が乗ったX染色体が不活化されるか否かによって、細胞内のα-ガラクトシダーゼ活性が“all or none”の状態になると考えられます。従って、組織全体ではα-ガラクトシダーゼの活性を持っている細胞と持っていない細胞とがモザイクの状態で存在すると推測されます。ヘテロ接合体では、正常な活性を持つ細胞の占める割合により、臨床的多様性が生じると思われます。
 実際に、ファブリー病ヘテロ接合体の女性由来の培養線維芽細胞を抗セラミドトリヘキソシド抗体で染色しますと、染色される細胞と染色されない細胞とが混在しており、このことを裏付けます。
 ヘテロ接合体の診断では、皮膚などの生検組織を用いた病理検査で、細胞内に封入体が存在するかが重要な所見となります。


提供 : 株式会社スズケン


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