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<スズケンDIアワー> 平成16年4月15日放送内容より スズケン

ファブリー病治療薬
アガルシダーゼベータ


東京都臨床医学総合研究所 臨床遺伝学研究部門
桜庭 均

iconファブリー病の治療

 ファブリー病の原因となる遺伝子変異についても、少しだけ触れておきます。α-ガラクトシダーゼをコードする遺伝子はX染色体の長腕上にあります。  そして、これまでに少なくとも370種類を越す遺伝子変異が報告されており、遺伝子の部分欠失、挿入、ミスセンス変異、ナンセンス変異やスプライシング異常など極めて多様です。
 ファブリー病に対する治療として、まず対症療法があります。これらは、カルバマゼピンなどの薬剤による鎮痛、抗血小板薬による血栓の予防、強心剤、抗不整脈剤やペースメーカー装着による心症状への対処、腎透析や腎移植など、腎症状への対処であり重要です。これらに加えて、根本的な治療法の導入が望まれていました。それが、今回のアガルシダーゼベータをはじめとする酵素の補充療法です。

icon遺伝子組み換え酵素薬開発の現況

 これまでに開発されたファブリー病の遺伝子組み換え酵素薬としては、今回のアガルシダーゼベータとアガルシダーゼアルファがあります。このうち、アガルシダーゼベータは、酵素をチャイニーズハムスター卵巣細胞で生産したもので、すでにヨーロッパ、米国で承認され、日本でも発売されることになりました。一方、アガルシダーゼアルファは、ヨーロッパで承認され、日本でも審査中です。ここでは、欧米で行われた、アガルシダーゼベータの第3相臨床試験とその延長試験の結果を紹介します。この臨床試験は、多国間、多施設でプラセボ対照の二重盲検形式で行われました。ファブリー病の患者を2群に分け、そのうちの29人に実薬が、その他の29人には偽薬が20週間投与されました。また、延長試験はオープンラベル形式で、全員に対して実薬がさらに20週間投与されています。
 プライマリーエンドポイントとしては、組織学的解析で腎臓間質の毛細血管および微小血管内皮におけるセラミドトリヘキソシドの蓄積スコアの改善が設定されました。セカンダリーエンドポイントは、腎臓、心臓、皮膚の微小血管内皮中の蓄積スコアの改善、尿沈渣や腎臓中のセラミドトリヘキソシドの減量、痛みの改善が設定されました。
 組織に蓄積したセラミドトリヘキソシドは、トルイジンブルー・アズール2の色素で染色されます。薬剤投与前の腎臓間質の毛細血管内皮では強い染色性がみられますが、薬剤投与で染色性が著しく減少しました。

(資料22:「Agalsidase beta投与による腎臓、心臓、及び皮膚の微小血管内皮におけるCTH蓄積スコアの変化」)

 そして、腎臓、心臓および皮膚でのセラミドトリヘキソシドの蓄積スコアを調べてみますと、プラセボ投与群では投与前と比べてほとんど変化がないのに対して、実薬投与前では明らかに改善しました。
 加えて、プラセボ投与群においても、その後の延長試験での改善が確認されました。痛みについては、改善傾向が見られましたが、プラセボ投与群でも効果がみられたため、統計的有意差は認められませんでした。

(資料24:「Agalsidase betaの第3相臨床治験中にみられた副作用」)

 臨床試験中にみられた副作用として、悪寒戦慄、発熱や頭痛などがあり、IgG抗体陽性転換率は88%でした。対策として、点滴速度を下げ、抗ヒスタミン剤、解熱剤や副腎皮質ホルモン剤の投与を考慮する必要があります。
 以上の様に、今まで根本的治療法がなかったファブリー病に対して有効なアガルシダーゼベータという薬剤が承認されました。今後、適切な投与開始時期や投与方法について検討がなされ、患者に役立てることが望まれます。


提供 : 株式会社スズケン


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