→ 番組表はこちら
→ ストリーミング版はこちら
<スズケンDIアワー> 平成16年5月13日放送内容より スズケン

オクトレオチド
徐放性製剤


神戸大学内分泌代謝・神経・血液腫瘍内科 教授
千原 和夫

iconソマスタチンの臨床への試みとオクトレオチドの開発

 1973年、米国Salk InstituteのBrazeau, Guilleminらは、羊視床下部抽出物から、下垂体の成長ホルモン(GH)分泌を抑制する物質を単離、構造を決定し、ソマトスタチンと命名しました。ソマトスタチンは14個のアミノ酸からなるペプチドで、3位と14位のシスチンのジスルフィド結合により環状構造を示します。ソマトスタチンは、当初、視床下部から発見されましたが、その後の研究により、ソマトスタチンは脳だけでなく、消化管や膵臓など体内に広く分布し、また作用もGH分泌抑制のみならず、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌、膵臓ラ氏島からのインスリンやグルカゴン分泌、消化管からのガストリン、血管作動性腸ポリペプチド(VIP)などの分泌を抑制することが明らかとなりました。ソマトスタチンの作用は、ソマトスタチン受容体を介して発揮されますが、この受容体は、正常組織のみならずGH産生下垂体腫瘍、TSH産生下垂体腫瘍のほか、膵内分泌腫瘍、カルチノイド腫瘍など神経内分泌細胞由来の腫瘍に発現していることが明らかとなりました。これらの腫瘍では、腫瘍から過剰に分泌されるホルモンあるいは生理活性物質が疾病の基盤を形成していることより、ソマトスタチンを用いて腫瘍からのホルモン過剰分泌を抑制する治療が考案されました。しかし、ソマトスタチンは体内で壊れやすく血中半減期は2〜3分と短く実用的ではありませんでした。
 1980年にアミノ酸8個からなるソマトスタチンアナログであるオクトレオチドが開発されました。オクトレオチドの血中半減期は100〜105分と長く、ソマトスタチン受容体に対する親和性も強いことから臨床応用が進み、GH産生下垂体腫瘍が原因で起こる先端巨大症や下垂体性巨人症の治療、また、各種消化管ホルモン産生腫瘍の治療に使用されてきました。しかし、半減期が長くなったとは言え治療に際しては、1日2〜3回、毎日皮下注射を行う必要があり、何年にもわたる治療の場合には患者のコンプライアンスが低下し、治療継続が困難になることも稀ではありません。
 そこで、長期にわたるオクトレオチドによる治療を可能とするために、オクトレオチド徐放性製剤が開発されました。オクトレオチド徐放性製剤は、従来の1日2〜3回投与の皮下注射を4週ごと、すなわち1ヶ月に1回の筋肉内注射で、十分に同等の効果を発揮させることができるため、注射回数を著しく減らすことができます。このことから、臨床の現場での薬剤投与の利便性、そして患者の薬物治療に対するコンプライアンスの向上が期待されています。オクトレオチド徐放性製剤は、海外においては1990年代半ばから臨床応用されていますが、本邦においては2004年4月にやっと承認がおり、近い将来、使用可能となる予定です。


提供 : 株式会社スズケン


1 2 3 次項へ