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<スズケンDIアワー> 平成16年5月27日放送内容より スズケン

てんかん焦点部位診断薬−イオマゼニル


国立病院機構 静岡てんかん神経医療センター第二脳神経外科
松田 一己

icon新しい診断薬イオマゼニールの意義

 本日は、この4月23日に製造承認されたばかりの新しい放射性診断薬、イオマゼニルについて御紹介します。
 本剤は、脳の抑制系と密接に関連する中枢性ベンゾジアゼピン受容体(以下、ベンゾジアゼピン受容体と略しますが)と選択的に結合し、その脳内分布をSingle Photon Emission Computed Tomography、通称SPECTを用いて画像化する目的で開発されました。イオマゼニールの臨床試験は今をさかのぼる10年前にスタートしたのですが、旧GCPから新GCPへの移行期ともあいまって他の放射性薬品と同様、なかなか承認を得られない状況が続いておりました。その中で脳SPECT製剤としては10年ぶりに、新しいトレーサーが承認されたことの意義は大きく、しかも脳血流イメージだけであったSPECTに、神経受容体イメージが加わり、より神経細胞に密着した情報が得られることから高い期待が寄せられています。
 脳、すなわち中枢神経系においては抑制系と興奮系の微妙なバランスのもとに神経細胞の安定した活動がなされており、中枢神経系の異常はこれらのバランスがくずれた状態にあります。この内、抑制系については、その評価に中枢性ベンゾジアゼピン受容体の濃度変化を指標として用いることが多く、抑制系が障害される病態の多くに、この受容体濃度の低下が推定されます。このような状況は中枢性疾患に広く存在し、受容体濃度の状況を把握することは、診断や治療とその評価に役立つと考えられます。従って、本剤の臨床試験開始時点では、本日のテーマであるてんかんの他に、脳血管障害や変性疾患、精神障害など広い神経疾患を対象としてスタートしましたが、その中で有用性が確立し得たてんかん焦点の同定法として、先行して適応の認可を受けることになりました。他の神経疾患領域における適応も、今後の臨床試験による治験の集積により、さらに広がるものと期待されます。

iconてんかんの定義と発作焦点の同定

 本日の主題であるてんかん焦点の同定におけるイオマゼニルSPECTの役割について述べます。てんかんは大脳の神経細胞の異常な興奮がてんかん発作を生じ、これが反復して繰り返される病態を示します。現在、抗てんかん薬の適切な投与により7割以上の患者さんで発作が抑制されますが、残りの2割強は薬によっても発作が抑制されない、いわゆる難治てんかんです。この内、脳の一部に発作を起こす病因が存在する局在関連性の部分てんかん患者に対し、手術による治療が成果をあげています。この手術を成功させる最も重要な条件は、てんかんの発作焦点を正確に同定することにあります。

(資料4:「外科治療をすすめる手順と術後の経過観察の手順」)

 それを目的に、頭皮脳波と発作症状を同時に記録する方法や脳磁図、各種の画像診断や神経心理検査など多方面から総合的に検討し、てんかん焦点を絞り込んでいきます。それでも情報が不確かな場合には、手術により頭蓋内の脳表や脳内に電極を留置して脳波記録を行い、最終的にてんかん焦点を同定します。
 この過程で、画像診断は焦点部位を視察的に解剖学的構造上に反映する手段として、重要な情報源となります。これにはいくつかの検査手段がありますが、MRIは形態学的な異常を検出するのに最も鋭敏な検査として、画像診断の中核をなします。しかし、実際のてんかん焦点はMRI異常を超えてその周囲の脳組織におよぶため、これらを一体とした機能的異常領域として捕らえるのがSPECTやPETによる機能的画像診断法です。

(資料6:「発作時の脳血流SPECTで右側頭葉のてんかん焦点が明らかにされた症例」)

 さらに機能的画像診断法では発作のない間欠期のみならず、発作時の機能的変化を捉えることが可能です。現在、発作時の脳血流SPECT検査が確度の高い焦点同定法として用いられますが、実際の臨床において発作時の検査は容易ではありません。従って、発作間欠期でもより精度の高い情報を得る検査手段が望まれており、その観点からもイオマゼニルを用いたSPECTに期待が寄せられております。

(資料7:「抑制系の模式図」)

 イオマゼニルはGABA-A受容体と共役複合体をなすベンゾジアゼピン受容体と選択的に結合し、partial inverse agonistとしての薬理作用を有するとされます。その働きについてはまだ不明な点も多いのですが、この検査に使用される投与量では人体への影響はないと考えられています。一方、イオマゼニルを用いたオートラジオグラフィーの結果からも、ベンゾジアゼピン受容体との選択的結合能が高いことが明らかにされております。


提供 : 株式会社スズケン


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