→ 番組表はこちら
→ ストリーミング版はこちら
<スズケンDIアワー> 平成16年6月10日放送内容より スズケン

HIV-1感染症治療薬フマル酸テノホビルジソプロキシル(TDF)
フマル酸テノホビルジソプロキシル(TDF)


国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター長
 木村 哲

iconHIV感染と日本の現況

 本日は抗HIV、エイズ薬であるフマル酸テノホビルジソプロキシルについてお話させていただきます。HIV感染症が初めて認識されてから、まだ20年余しか経っていませんが、この20年間にHIV感染症は瞬く間に世界に広がり、これまでにおよそ7,000万人に感染しました。その内、約3,000万人がすでに亡くなっており、現在の生存者数は約4,000万人です。
 世界4,000万人の生存感染者の内、4分の3はサハラ以南のアフリカ諸国に集中しています。地球上では現在も、毎年約500万人が新たに感染し、約300万人の命が奪われています。特に、アフリカを初めとし、最近は中国南部、インド、ミャンマーなどの途上国で感染者が著しく増加しています。
 日本では、現在までに約1万人の患者・感染者が報告されていますが、実際にはこの数倍の感染者が存在すると推定されています。しかも多くの先進諸国と異なり、日本では現在も増加し続けていることが問題です。これから述べますように、HIV感染症の治療法は著しく進歩しました。しかし、日本では抗体検査の啓発が不足しており、感染していることを知らずに過ごし、新しい治療法の恩恵に浴することもなく、AIDSを発症してしまう人が増えています。適切な治療により、AIDSの発症は予防できますが、治療が遅れると死に至る病であることは周知の事実です。

icon抗HIV薬の開発状況

 抗HIV薬として、初めて臨床応用されたのは核酸系逆転写酵素阻害薬のAZTです。これは、かつて抗癌剤の候補品として検討されましたが、副作用が強いため、日の目を見ないまま放置されていました。これが試験管内でHIVに良く効くことが判り、事の緊急性から短期間の臨床試験の後、1987年にFDAによって迅速承認されました。AZTを皮切りに数種の核酸系逆転写酵素阻害薬が次々と開発されましたが、これら薬剤の単剤による治療や、2剤併用療法では大幅な改善は得られず、1990年台半ばまでHIV感染症、AIDSは極めて予後不良の疾患と考えられていました。この常識を打ち破ったのがHIVプロテアーゼの阻害薬の開発でした。
 逆転写酵素阻害薬2剤とプロテアーゼ阻害薬1剤を併用することにより、HIVの増殖を強力に抑えられ、CD4陽性リンパ球数が大きく回復することが示されたのです。このような併用療法がHAART (highly active antiretroviral therapy)と呼ばれているものです。これによりアメリカでは1995年以後、AIDSの発症とAIDSによる死亡が激減しました。
 そして、日本でも2003年末までに、核酸系逆転写酵素阻害薬が6剤、非核酸系逆転写酵素阻害薬3剤、プロテアーゼ阻害薬7剤、合計16剤が抗HIV薬として承認され、使用されるようになっていました。本日紹介するフマル酸テノホビルジソプロキシル(TDF)は17番目の抗HIV薬として、今年(2004年)3月に承認された新薬です。


提供 : 株式会社スズケン


1 2 3 次項へ