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<スズケンDIアワー> 平成16年9月16日放送内容より スズケン

DI実例集(146)新しい経管投与法


昭和大学藤が丘リハビリテーション病院 薬剤部長
倉田なおみ

icon経管投薬法の新しい考え方

 本日は新しい経管投薬法である「簡易懸濁法」をご紹介します。

(資料1:「通常の経管投薬法」)

 経管栄養の患者に薬を投与する時、看護師や介助者は粉末状に調剤された薬を水に入れて懸濁し、その懸濁液を注入器に吸い取って、経管栄養チューブに注入します。実はこのとき様々な問題が生じています。例えば散剤が水に混じりあわなかったり、細粒が発泡スチロールのように水に浮いてしまう、などというようなことがあります。これら疎水性の薬に限らず粒子径の大きな顆粒剤などを注入器に吸い取る時に、全量を吸い取ることは困難ですし、ようやく注入器に吸い取ったとしても、注入器に薬が残って全量が投与できません。我々薬剤師が、ロスが生じないように一生懸命調剤しても、このように投与毎に投与量のロスが生じています。さらに、注入した薬がチューブを閉塞させるということも珍しくなく、閉塞率は6〜38%というデータもあります。しかし、投与の現場で起こっているこれらの問題が調剤した薬剤師にフィードバックされるということは少ないようです。
 私たちがこの研究を始めたのも、看護師からの「胃瘻にパナルジン細粒が詰まってしまってどうしよう!」という必死の電話がきっかけでした。“薬剤師が調剤した薬がチューブを詰まらせた”という事実に直面し、ショックを受けました。では、他の細粒・顆粒剤は大丈夫なのか、カプセルの中には大きな顆粒も入っているけどあれは大丈夫なの? と次々に疑問が湧いてきました。
 経管投与の場合、当然ですが錠剤のままでは経管栄養チューブから投薬できないので、薬剤師は錠剤をつぶして調剤していますが、もし錠剤・カプセル剤をそのまま水に入れたときに崩壊・懸濁するのであれば同様に投与でき、つぶす必要はないと考えました。そこで考案したのが簡易懸濁法です。

icon簡易懸濁法とその実験について

 簡易懸濁法とはつぶしの処方であっても、水に入れて崩壊・懸濁する錠剤・カプセル剤ならば、錠剤をつぶしたりカプセルを開封したりしないで、投与時に錠剤・カプセル剤のままお湯に入れて崩壊・懸濁させるという方法です。

(資料2:「簡易懸濁法とは・・・」)

 どの錠剤が水に入れた時に崩壊・懸濁するのか、薬品が疎水性でないか、チューブを閉塞させないかなど薬品の物性がわかりませんでした。そこで我々はこれらを確認するために1薬品ずつ実験を行いました。
 実験の方法ですが、まずインタビューフォームから製剤上の特徴や安定性などの情報を収集し、次に崩壊懸濁試験を実施しました。崩壊懸濁試験とは、錠剤またはカプセル剤1個を注入器に入れ、55℃のお湯20mLを吸い取り、蓋をして5〜10分放置後攪拌し、崩壊懸濁の状況を観察します。もし崩壊懸濁していない錠剤であれば、錠剤をシートの上から乳棒で叩いてフィルムを壊した状態にして、同様の手段で実験を行います。そして、崩壊懸濁した薬品については次の通過性試験を行います。通過性試験は、崩壊懸濁試験でできた懸濁液を実際に8〜18フレンチのチューブを通過させ、その通過性を観察します。1フレンチは0.33mmですので、8フレンチは直径2.7mmの細いチューブ、18フレンチは6mmの太いチューブです。
 実験の結果です。
 まず、細粒剤・顆粒剤116薬品のうち、経管投与可能な薬品は70%であり、他の30%はチューブが細いと閉塞するか全く投与できない薬品でした。簡易懸濁法導入前は「振り替えてはいけない散剤がある」という認識はありませんでしたから、全116薬品を振り替え可能としていました。つまり、調剤していた細粒剤・顆粒剤の30%がチューブを詰まらせる危険性があったわけです。特にパナルジン細粒と重質酸化マグネシウムはチューブを閉塞しやすく、看護師を悩ませている薬品です。カマは澱粉を混ぜると流動性が良くなると日本薬局方に記載されていますので、詰まりにくくするために当院ではカマに対し半量の澱粉を加えて調剤します。また、マグミット錠は粒径を小さくし、チューブを詰まらせないように開発されたカマで、水に良く溶け、スムーズに通過します。
 次にカプセル剤116薬品のうち、簡易懸濁法ではカプセルのままお湯に入れても80%が8フレンチのチューブを通過します。カプセルごと崩壊させますので、軟カプセルであっても投与可能です。しかし、20%はチューブの太さによって、または全く投与できませんでした。簡易懸濁法導入前はこの問題となる20%の薬品は脱カプセル可能としていましたので、軟カプセルを除くカプセル剤の1/4は閉塞を起こす危険があったことがわかりました。
 次に錠剤ですが、668薬品のうち70%は温湯中に入れれば崩壊懸濁します。さらに12%の薬品はフィルムを壊してから崩壊懸濁させることによって投与可能となります。つまり82%の錠剤は粉砕しなくても経管投与が可能だったのです。これらの薬品が粉砕できるかを検討すると吸湿性、安定性などの問題から、粉砕可能な錠剤は65%でした。つぶすより簡易懸濁法のほうが投与可能な薬品数が多くなり、治療の幅が広がるということがわかりました。


提供 : 株式会社スズケン

      

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