昭和大学藤が丘リハビリテーション病院 薬剤部長
倉田なおみ

これらの結果を50音順と薬効分類順にして一覧表にまとめました。例えばH2ブロッカーのところを見てみますと、タガメット、アシノン、ガスター、ガスターD、プロテカジンはそのまま温湯に入れれば5分以内に崩壊懸濁し8フレンチのチューブを通過しますが、ザンタックは崩壊懸濁に10分を要すること、またアルタットは12フレンチ以上の太さのチューブで出ないと詰まる可能性があること、さらにタガメット細粒は特殊な方法が必要なことなどがわかります。これらの結果の全ては、内服薬経管投与ハンドブック−投与可能薬品一覧表−にまとめて、じほう社より発行しました。
簡易懸濁法のメリットと問題点
簡易懸濁法のメリットについてお話します。

先に示しました投与時に起こるチューブ閉塞、投与量ロスなどの問題は1薬品ずつ確認したことで解決できました。一方、粉砕調剤時に生じる問題点として、光、湿度、温度などによる安定性への影響、吸収やバイオアベイラビリティの変化、薬品のロス、調剤者の健康被害、調剤時間の増大、調剤業務の煩雑化、それによる過誤の危険性の増大などがあげられますが、簡易懸濁法ではつぶしませんのでこれら全てが解決できます。
その他、簡易懸濁法では投与可能薬品が増加し、軟カプセルや抗癌剤などの投与も可能です。投与時に薬品が再確認できることはリスクの面から、中止変更の対応が容易であるということは経済面での大きなメリットとして挙げることができます。
次に簡易懸濁法を病棟に導入する際の問題点についてですが、現在多くの施設や在宅の場でこの簡易懸濁法が実施されるようになってきましたが、多くの施設で挙げられる問題点は水温を約55℃にすることと、崩壊懸濁に10分を要するという点です。
まず、水温を55℃に設定した理由はカプセルを溶かすためで、日本薬局方でカプセルは37℃±2℃で時々揺り動かす時、10分で崩壊すると規定されています。しかし医療の現場で37℃をキープするということは不可能ですので、10分間自然放置したときに37℃以下にならない温度が約55℃でした。しかし、厳密に55℃である必要はなく、当院ではナースステーションの蛇口の水を一番熱くして出すと55℃近辺になりますし、ポットのお湯:水を2:1の割合で入れると大体55℃となります。
次に10分間の放置時間の問題ですが、当院看護師は従来栄養剤投与後に薬品を溶解しすぐに投与していたため、そのままの手順では10分は待てないとの意見でした。そこで栄養剤の投与を始めたときに薬品を温湯に入れて準備することによって、その問題は解決しました。
|