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<スズケンDIアワー> 平成16年10月7日放送内容より スズケン

インフルエンザ予防治療薬 リン酸オセルタミビル


神奈川県警友会けいゆう病院 小児科部長
菅谷 憲夫

iconノイラミニダーゼ阻害薬の薬物動態

 次にノイラミニダーゼ阻害薬について説明したいと思います。ノイラミニダーゼ阻害薬の利点はアマンタジンと比べて、(1)A型、B型、両方のインフルエンザに有効で、(2)耐性ウイルスの出現頻度が低く、耐性ウイルスは感染性が弱く、(3)副作用も少ないという3つの点です。ノイラミニダーゼ阻害薬としては、日本でも世界でもほとんどoseltamivirが使用されています。
 oseltamivirは、内服で使用するノイラミニダーゼ阻害薬です。治療に使用した場合、耐性ウイルスが、成人で1%以下、小児では5.5%に出現すると報告されています。東大医科研の河岡教授と私たちとの共同研究では、小児でも低年齢層では、さらに耐性率は高く、20%前後はあることがランセット誌上に発表されました。アマンタジンと異なり、耐性ウイルスが周囲に感染したという報告はありません。oseltamivirで治療した患者に耐性ウイルスがでても、再び発熱したり、重症化することもありません。出現した耐性ウイルスは、7日から10日で、のどから消失します。ですから、oseltamivirは従来通り、小児に使用しても問題はありません。
 最近のトピックとしては、日本でも高齢者と13歳以上のハイリスク患者を対象に、oseltamivirの予防投与が認められたことがあります。初発のインフルエンザ患者を抗ウイルス剤で治療して、周囲の接触者に抗ウイルス薬で予防を試みたいことは臨床ではしばしば経験いたします。この時、アマンタジンを使用すると、初発患者から耐性ウイルスが生じるために、周囲の人々がアマンタジンを予防的に内服しても、耐性ウイルスが感染して無効であったことが報告されています。このような場合、ノイラミニダーゼ阻害薬で初発患者を治療して、周囲の人々をノイラミニダーゼ阻害薬で予防すると、耐性ウイルスの発生率が数パーセントと低いこと、耐性ウイルスが周囲の人々に感染しないこともあり、有効に予防することができます。

(資料2:「インフルエンザの構造」)

 周囲にインフルエンザ患者が発生した場合、65歳以上の高齢者、13歳以上の慢性呼吸器疾患と心疾患患者、糖尿病等の代謝疾患患者、腎機能障害のある患者に、1週間から10日間、予防的にoseltamivirを処方することが最近認められました。ただし、保険適応はありません。これを、post-exposure prophylaxis(またはpost-contact prophylaxis)といって、日本語に訳すと接触後予防あるいは暴露後予防といいます。この場合、1日1回1カプセル、75mgの内服となりますから、通常の治療量の5日分投与で、10日間の予防が可能です。
 ヨーロッパ諸国では、日本と同様にノイラミニダーゼ阻害薬によるpost-exposure prophylaxisが認められています。米国では、ノイラミニダーゼ阻害薬による施設内での長期予防が認められています。今まで先進諸国の中では、日本のみ、予防投与が認められていなかったのです。しかし実際には、欧米では治療的にも、予防的にもoseltamivirはあまり使われていません。日本では、世界の中でも、oseltamivirによる治療が最も普及した国ですから、これから予防投与も広く実施されると思います。
 予防投与を開始するタイミングにもよりますが、70〜80%の発症防止効果が期待されます。一点、注意すべき点があります。インフルエンザは潜伏期が1〜2日と大変に短いので、多くのケースで予防投与を開始するときには、すでに感染していて、潜伏期か、あるいはすでに発病初期の時もあると思います。特に接触の度合いが濃い家庭内ではそういう傾向があります。ですから、それを念頭に置いて、発熱など、インフルエンザの初期症状が見られたら、ただちに1日2回の通常の治療に切り替えることが大切です。


提供 : 株式会社スズケン

      

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