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<スズケンDIアワー> 平成16年10月28日放送内容より スズケン

新薬の薬価算定根拠について(8)


日本大学薬学部薬事管理学 教授
白神 誠

icon選定療養について

 次に前回時間の関係で説明できなかった、適応拡大に関する特定療養費の取り扱いについて説明します。
 医療保険では、保険が適用となる医療と保険が適用とならない医療を組み合わせる、いわゆる混合診療を原則禁止しているのはご承知と思います。これは、使用する医薬品についても同様で、薬価基準に収載されていない医薬品を用いて治療すれば混合診療ということになってしまいます。また、医療保険の対象となるのは薬事法により承認された適応だけですので、たとえその医薬品は薬価基準に収載されていても薬事法による承認を受けていない適応に使えば保険外適用ということになります。
 ところで原則禁止されていると申し上げたのは、法的に例外が認められているからです。それらには、大学病院等の特定承認保険医療機関で受ける高度先進医療と、その他の医療機関や薬局で受ける選定療養とがあり、これらの治療のうち医療保険が対象となる部分について支払われるものを特定療養費とよぶことから、特定療養費制度ともいわれます。残りの部分については、患者の負担ということになります。

(資料6:「選定療養(1)」)

 選定療養としては、いわゆる差額ベッドの利用や歯の治療における金合金や白金合金の使用あるいは予約に基づく診察などがあります。治験薬の使用や治験にかかる診療も選定療養ですので、治験が行われる場合、治験薬を含め治験に関連した費用は自己負担、通常は治験を依頼した製薬企業が負担しますが、それ以外の費用は特定療養費として保険がカバーします。
 また、より有用な医薬品を少しでも早く使えるようにするため、薬事法の承認を受けてから薬価基準に収載されるまでの間の使用についても、選定療養になります。ただし、薬価基準に収載されるまでの間ということですので、対象となるのは承認後90日以内に限定されていますし、使用できるものも厚生労働大臣が定める施設基準に適合する病院、診療所、薬局に限られます。     

(資料7:「選定療養(2)」)

 この選定療養の対象に平成16年1月1日から新たに、一定の条件を満たす抗がん剤などの適応外使用が加えられました。薬事法上の規定では、効能効果や用法用量を追加する場合には、臨床試験成績を添えて、承認事項の一部変更申請を行わなければなりません。しかし、製薬企業にしてみると臨床試験を行ってまで効能効果や用法用量の追加をしたくないというケースもあります。そのような場合には結果として海外で相当の使用実績があるにもかかわらずわが国では使用できないということが生じていました。そこで、そのようなケースについて、あらかじめ薬事・食品衛生審議会で、医学薬学上公知であり臨床試験に関する資料の省略が認められるかどうかについての評価を行い、そのように判断された場合は製薬企業に承認申請を促すことになっています。医学薬学上公知なものとされるのは、国際的に信頼できる学術雑誌に掲載された論文や国際機関で評価された総説等があるなどの条件を満たす必要があります。
 今回の選定療養の扱いでは、薬事・食品衛生審議会が事前の評価を開始した医薬品の投与については、評価が開始されてから6ヶ月間、またその結果一部変更承認申請の申請が行われた医薬品の投与については、申請が受理された日から2年間を対象とし、患者から特別な料金を徴収できることになりました。この取扱いの対象となる医薬品として、一部変更承認申請が受理された医薬品16成分41品目が通知されました。この中にはアスピリンの川崎病への使用や、尿路上皮癌などへのM-VAC療法として知られる、メソトレキサート、硫酸ビンブラスチン、塩酸ドキソルビシン、シスプラチンなどが含まれています。
 ただし、特別な料金を徴収するためには、患者への十分な情報提供が前提とされており、患者に対してその医薬品の主な情報を文書により提供した上で、患者の自由な選択と同意がなされたものに限られます。
 これらの使用については、国内における十分な臨床試験成績がないのもまた事実ですので、慎重な取り扱いが求められるでしょう。


提供 : 株式会社スズケン

    

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