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<スズケンDIアワー> 平成16年11月4日放送内容より スズケン

肝癌への経皮注入療法剤−無水エタノール


福井大学医学部附属病院薬剤部 副薬剤部長
後藤 伸之

icon肝癌治療の現状

 日本人の3大死因は、癌、心疾患、脳血管疾患で癌が第1位です。癌のなかでは胃癌、肺癌、肝癌の順に多いと報告されています。

(資料1:「日本人の死因」)

 肝臓にできる癌には、原発性肝癌と肝臓以外の臓器にできた癌が転移してできる転移性肝癌に分類できます。原発性肝癌は、由来する細胞から肝細胞癌、肝内胆管癌、その他の癌に大別され、肝細胞癌が約95%を占め最も多く、一般的に肝細胞癌のことを肝癌と呼ぶことが多く、今回も肝癌と呼ぶことにします。
 肝癌の大半がC型ないしB型肝炎ウィルスの持続感染が原因となっています。日本肝臓学会の肝癌白書によれば、約71%がC型肝炎ウィルス、約23%がB型肝炎ウィルスに起因していると報告されています。日本人の約3%が、この肝炎ウィルスのキャリアと想定されています。その約10%(約30万人)が肝硬変症になっており、この肝硬変症の集団から毎年3〜4%の頻度で肝癌が発生し、毎年約3万人が肝癌で死亡しています。
 肝癌の治療法には、外科的切除、血管造影を使用した動注療法、動注塞栓療法、持続動注化学療法、腫瘍に針を刺してエタノールや熱で凝固壊死させる局所療法の主に3つの方法があります。他に放射線治療、全身化学療法、肝移植などもありますが、治療の柱は先に述べた3つです。大きさや部位など肝癌の進行度、患者の肝機能や肝予備能などを総合的に判断し治療が選択されます。
 外科的治療である肝切除術は根治性が最も高い治療法です。しかし、肝癌は慢性肝炎や肝硬変を背景にして発生してくることが多く、肝予備能が低下している患者には侵襲性が高く肝切除術が適応となる症例は限られています。また、肝癌は他の癌と異なり外科的切除で取りきっても肝炎ウィルスに起因する多中心性発癌のため残肝に新たに発癌を起こす可能性が高いので、何度でも繰り返しおこなえる侵襲性の低い治療が望ましいと考えられています。

icon肝癌の経皮的エタノール注入療法

 そこで、腫瘍に針を刺しエタノールや熱で凝固壊死させる局所療法が重要な治療法になります。

(資料3:「肝癌の経皮的エタノール注入療法」)

 局所療法で最初に普及した経皮的エタノール注入療法(以後PEIT)は、1982年に千葉大学で開発された方法で、超音波で腫瘍をみながら腹壁から腫瘍内に細いアルコール注入針を刺し、無水エタノールを注入し化学作用により腫瘍組織を選択的に壊死させる治療法で、低侵襲で小肝癌の治療が容易となった画期的な治療法でした。PEITの手技は、診療報酬で点数化されているにもかかわらず、用いる薬剤である無水エタノールは注射剤として医薬品の承認を受けておらず、現在は病院薬剤部で調製され、院内製剤として臨床に供給されているのが現状です。
 院内製剤は、調製した医療機関内ですべて消費されるものであり、例えPEITが適応となる患者さんがおられても、無水エタノール注射剤を院内製剤できない医療機関では治療は行えません。その他にも院内製剤には、法的位置づけが曖昧で、薬事法に基づく製造許認可を受けたものではないので保険請求は出来ません。また、その院内製剤の有効性や安全性に関するデータが系統的に収集されていない場合がほとんどで、当然ながら医薬品副作用救済基金制度の対象外です。さらに品質保証に関し、充分に検討されていない場合が多いなど、課題を抱えています。

    
提供 : 株式会社スズケン

      

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