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<スズケンDIアワー> 平成16年11月4日放送内容より スズケン

肝癌への経皮注入療法剤−無水エタノール


福井大学医学部附属病院薬剤部 副薬剤部長
後藤 伸之

iconPEITの有用性情報調査

 そこで我々は、PEITに用いる無水エタノール注射剤を院内製剤から製薬企業により市販医薬品として供給して頂くことを目的とし、文献調査ならび全国大学病院ならび、国立病院の薬剤部における調製実態調査を行いました。
 まず、医学データベース「医学中央雑誌」を用い1988年〜1995年までの文献調査を行い、肝癌のPEITに関する報告402報を収集することができました。その報告施設は、全国41都道府県にまたがり広く日本中でPEITが実施されていると考えられます。

(資料5:「肝癌のPEIT療法に関する有用性情報のまとめ」)

 次に収集した文献を総合的に評価しました。有効性に関しては、抗腫瘍効果、壊死効果ともに90%程度の効果が得られていました。生存率も腫瘍径3cm以下、3個以内の症例における生存率は3年生存率で約70%、5年生存率でも約50%と良好でした。複数の報告においてほぼ類似な成績が得られており、安定した治療法であると考えられます。
 また、肝切除とPEITとの比較では、生存率に有意な差がないと報告されております。PEITは、肝切除と比較して患者さんに対する侵襲が少ないのが特徴です。頻度が高い副作用は一過性の発熱が約50%、疼痛が12%程度であると報告されています。重篤な副作用としては、肝梗塞、腹腔内出血などが報告されています。その他数多くの症例報告があり、副作用情報も充実していました。
 診療報酬上で経済性を見てみますと、PEITが1万円であるのに対し、肝の部分切除は19万6千円であり、入院期間、処置料等を考えあわすとPEITは、大変コストパフォーマンスの高い治療法です。

icon無水エタノール注射剤の使用実態調査

 次に、無水エタノール注射剤の調製実態を調査した結果を紹介いたします。

(資料7:「無水エタノール注射剤の使用実態調査」)

 調査対象179施設の内151施設から回答を頂き84%と高い回収率でした。院内製剤として無水エタノール注射剤は、129施設85%で調製されていました。年間調整本数が、100を越える施設が76%でした。そのうち、500本を越える施設も26施設、一千本以上の調製を行っている施設も4施設ありました。全施設合計の年間調整本数は、4万2586本で、総調製量は34万2千mLでした。
 製剤原料として、約44%の施設で医薬品でなく毒性試験が行われていない試薬を原料として用いていることも分かりました。
 薬剤部が無水エタノール注射剤に関する医薬品情報を提供していたのは2施設のみでした。また、薬剤部が臨床成績調査に取り組んでいるのは、9施設しかありませんでした。
 無水エタノール注射剤の市販化を124施設96%の施設が要望していました。無水エタノール注射剤の市販化要望理由としては、「安全性を含む品質管理に万全を期し、院内製剤を調製しているが、限界があり充分出来ていない」ということが最も多い理由でした。このように無水エタノール注射剤は、全国に院内製剤として調製され、かつ有用性と安全性に関する情報も集積された薬剤であることが分かりました。
 肝癌のPEITに用いる無水エタノールの適応外使用は、医学薬学上公知で厚生労働省が「適応外使用に係る医療用医薬品の取扱いについて」の通達に該当する薬剤と考えられ、平成12年11月に日本病院薬剤師及び日本病院薬学会(現在の日本医療薬学会)と連名で厚生労働省と製薬企業の団体である日薬連に対し、無水エタノールの適用拡大の検討を求める要望書を提出しました。また、連携して医学系関連学会とも同様の要望書が出されました。
 厚生労働省は、これらの要望を受け製薬企業と会合をもち、数社が共同で製剤化に取り組み平成15年1月に製造承認の申請を行い、平成16年1月に特定療養費制度の拡充による厚生労働大臣が定める医薬品に指定されました。そして、先日、平成16年10月22日付けで厚生労働省より製造承認がおり、現在薬価算定について協議中です。  


提供 : 株式会社スズケン

      

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